コラム

防犯効果を高める「ホットスポット・パトロール」とは? 日本の「ランダム・パトロール」との違い

2025年02月07日(金)11時10分
日本の街並み

(写真はイメージです) PeopleImages.com - Yuri A-Shutterstock

<「ホットスポット・パトロール」の効果は防犯だけにとどまらない>

住民パトロールの高齢化・マンネリ化が指摘されるなか、Polimill株式会社が提供するSNS「Surfvote」が「住民によるパトロールを活性化すべきか?」と一般の人に尋ねた。その結果によると、「住民によるパトロールの活性化を図るべき」が60%を超えたという(図表1)。この結果に多くの人が賛同するにしても、ではどうすればいいのか。どうすればパトロールを活性化できるのか。

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図表1

パトロールといえば、日本ではランダム・パトロールを指すのが一般的である。この手法はパトロールのルートを固定せず、毎回異なるルートで実施する方式である。しかし、このランダム・パトロールの防犯効果については科学的な検証が行われた例はない。

学問的な検証を行うには、比較対象を設定する必要がある。たとえば、A地区でパトロールを実施し、その効果を測定するためには、A地区と地理的特徴や人口、産業、交通などが似通ったB地区を選定し、両地区の犯罪発生率の変化を比較する必要がある。

結果として、A地区の犯罪発生率の減少がB地区よりも大きければ、パトロールには一定の防犯効果があるといえる。しかし、両地区の犯罪発生率の減少率が同じであれば効果は認められず、B地区の減少率が大きい場合には、むしろ犯罪を誘発する可能性すら考えられる。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページとYouTube チャンネルは「小宮信夫の犯罪学の部屋」。

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