コラム

防犯効果を高める「ホットスポット・パトロール」とは? 日本の「ランダム・パトロール」との違い

2025年02月07日(金)11時10分

犯罪の発生や減少には多くの要因が絡み合っている。人口の減少や景気の変動、娯楽品の価格の変動、地域スポーツクラブの設立、さらには天候などが犯罪発生率に影響を与える可能性がある。したがって、特定の活動、たとえばパトロールの効果を正確に測定するには、厳密な手順を踏んだ調査が必要であり、短絡的な結論は避けるべきである。

「証拠に基づく犯罪対策」を提唱するケンブリッジ大学のローレンス・シャーマン教授は、「科学的基準によって有効性が証明された地域密着型プログラムは存在しない」と指摘している。ただし、問題指向型のプログラムについてはその有効性を認めている。また、テキサス州立大学のマーカス・フェルソン教授は、警察官によるパトロールの範囲を試算し、「それぞれの場所が見られるのは1日につき15秒に過ぎない」と報告している。このような統計から、ランダム・パトロールの有効性について疑問が投げかけられている。

一方で、アメリカではランダム・パトロールに代わる手法として「ホットスポット・パトロール」が主流となっている。この手法は犯罪が多発する場所(ホットスポット)を重点的にパトロールするものである。ハーバード大学のアンソニー・ブラーガ研究員は、「ホットスポットに重点を置くことで犯罪を予防する効果が得られる」とし、「犯罪が周辺地域に転移することはない」と結論づけている。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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