コラム

「妊娠するためのサポート」が企業に求められる時代

2016年09月27日(火)16時13分

EmiliaU-iStock.

<不妊の検査・治療経験のある夫婦も、第1子出産後に働き続ける女性も、ともに上昇傾向にある。そこまでやる必要があるのかという声も聞こえてきそうだが、今こそ企業が「妊娠するためのサポート」をするべきだ。では、具体的にどんなアクションを起こすべきなのだろうか>

不安なく、自然に子どもを授かることは、とても難しい

 9月15日に国立社会保障・人口問題研究所によって、2015年実施の「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」の結果概要が公表された。

 それによると、今回調査では夫婦の完結出生児数(夫婦が最終的に出生する子どもの数)は、1.94人であり、前回調査(2010年実施)に引き続き、2人を下回った。また、不妊を心配したことがある(または現在心配している)夫婦の割合は35.0%と前回 (31.1%)よりも増加し、子どものいない夫婦ではこの割合は55.2%(前回52.2%)に上る。実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は、全体で18.2%(前回16.4%)、子どものいない夫婦で28.2%(前回28.6%)となっている。

「結婚持続期間に関わらず、不妊の検査や治療経験のある夫婦の割合が上昇傾向にある」とされている。夫婦の完結出生児数の低下には様々な要因が絡むが、子どもを授かることの困難さを感じずにはいられない結果であることに違いはない。

【参考記事】女性の半数が「夫は外、妻は家庭」と思っているのに、一億総活躍をどう実現するのか

様々な苦労と、「どうケアしたらいいか分からない」という戸惑い

 同調査では、「出産退職する妻は減少しており、妊娠前に就業していた妻に限定して就業継続率をみると、第1子出産前後では、就業継続率は4割前後で推移してきたものの、2010~14年では53.1%へと上昇した」とされている。今後益々、働きながら妊娠・出産する女性が増えることが想定され、企業は女性(夫婦)の「妊娠・出産」のケアにもっと目を向けなければならない。

 働く女性のまわりでは、何のトラブルもなく妊娠・出産を迎えられている女性の方が少ないのではないかと感じる程、多くの女性が妊娠・出産の過程で苦労をしている。妊娠前と同じようなハードな働き方をして流産したり妊娠中に絶対安静が必要な状況となる女性。共働き故の別居や出張等により妊娠する機会を得るのが難しい夫婦。生理や排卵等でトラブルを抱える女性。妊娠するために治療や通院を必要とする夫婦。苦労の具体的な内容は様々だが、この類の話は日常茶飯事だ。

【参考記事】妊婦が必ず席に座れるIoTマタニティマーク

 職場の上司や同僚に相談できる環境にある人はまだ恵まれている。プライベートなことであるが故に相談できずに抱え込んでいる女性も多い。また、男性マネジメント職からは、「部下の女性から『妊娠するために通院することになり、体外受精も視野に入れている』と相談されたが、何をどうケアしたらよいのか分からない」といった戸惑いも見受けられる。「妊娠・出産」というプライベートな事象を取り巻く環境が変化する中、女性自身も男性も企業もどう向き合ったらよいのか分からず、手探り状態にある。

プロフィール

古平陽子

株式会社電通 電通総研 主任研究員

2000年入社。マーケティング・プランニング部門を経て、現在は電通総研にて生活者・トレンド研究に従事。「女性/ママ/家族」「次世代育成」を専門領域とし、インサイト開発からプランニングまでを行う。財務総合政策研究所「女性の活躍に関する研究会―多様性を踏まえた検討―」に委員として参画。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story