コラム

ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」なのか?

2024年12月04日(水)11時52分

つまりハガキの宛名書きやポスター貼りのような単純作業をするから労務者とされるのではなく、機械的な労働であっても「自らの判断に基づいて積極的に」候補者を当選させようという目的があれば選挙運動員、目的がなければ労務者とされる。

今回の事件で明らかになっている金銭の授受は現時点で、ポスター、チラシ、スライドなどの制作費用計71万5000円だけ。斎藤知事の弁護士は、選挙告示前の「立候補準備行為」の対価であり違法性はなく、またこれ以外に一切払っていないと主張している。しかし、不自然な点は残る。


明らかに選挙運動従事者

例えばポスター制作費用は公費負担になるので、ポスター制作を受注した会社は依頼主(候補者)ではなく選管に費用を払ってもらえる。そのため契約書や確認申請書を事前に作成し、選管に提出する必要があることは選挙の常識だ。しかし今回、契約書は作成されていない。

社長が管理・監督していたというSNSアカウントでは期日前投票が呼びかけられ、「選挙カーの上から臨場感を届けるためのライブ配信」も行われていた。SNSの運用をはじめとする広報業務は、告示日前から選挙期間中を通じて一体化していたとみるほうが自然だ。その活動は「なんとか斎藤候補を当選させようとする」主体性と積極性に満ちており、「選挙運動に従事する者」に該当することは明らかではないだろうか。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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