コラム

ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」なのか?

2024年12月04日(水)11時52分

そこで主張されたのが、デザイン制作業務以外は全て無償、ボランティアだったという理屈だ。労務の無償提供は、金銭や物品の提供ではないが、公選法上の「財産上の利益」の供与に該当するので「寄附」になる。選挙では「陣中見舞い」と称して支援者が選挙事務所に金や物を持ってくることが多いが、選挙運動費用収支報告書に適切に記載される限り違法ではない。

また候補者の友人や熱心な支援者が手弁当で「選対」を担うことも多く、これらは候補者個人に対する「労務の無償提供」に当たるが違法ではない。公職候補者個人の政治活動に関する寄附の禁止を定めた政治資金規正法21条の2が、「選挙運動を除く」と規定しているからだ。


これに対して会社による「労務の無償提供」は、政治資金規正法21条1項が「会社は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない」と規定し、同法4条は政治活動に関する寄附は「選挙運動を含む」としているので、違法になる。つまり労務の無償提供が「個人」としてか「会社」としてかが重要だ。

なお、県との間で請負など特別の利益を受ける契約の当事者による寄附は、特定寄附として禁止されているが、PR会社が選挙期間中に兵庫県との間で「特別の利益を伴う契約」を結んでいなければ問題はない。

従って焦点は、PR会社の社長や社員が日中(就業時間内)に果たしてあれだけの広報活動を「個人」ボランティアとして行っていたのか、それとも「会社」として行っていたのか、事後的な報酬や案件の発注といった口約束がなかったのかという実態の究明に帰着する。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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