コラム

衆院選の勝敗と菅首相の去就を左右する秋の政局「3つのシナリオ」

2021年08月20日(金)11時27分

デルタ株という難局を菅首相は乗り切れるのか Issei Kato/Pool--REUTERS

<五輪の金メダル量産効果もなく、8月の世論調査で菅内閣の支持率が3割を切り始めた。デルタ株による新型コロナの爆発的な感染拡大が止まらず、「パンケーキおじさん」政権は発足から1年で早くも危険水域に入ったように見える。政権の命運を左右する秋の政局「3つのシナリオ」とは>

8月に実施された世論調査の結果がほぼ出揃った。菅政権の支持率は、時事通信に加えてNHKと朝日新聞の調査でも3割を切った。東京五輪開催で支持率が上向くのではないかという政権側の期待がくじかれた形だ。昨年9月に発足した菅政権は1年経たずして「危険水域」に突入している。

朝日新聞 支持率28%(不支持率53%)
時事通信 支持率29.0%(不支持率48.3%)
NHK 支持率29%(不支持率52%)
共同通信 支持率31.8%(不支持率50.6%)
読売新聞 支持率35%(不支持率54%)

各社の調査結果はおおむね支持率が3割前後、不支持率が5割前後を示している。ただし、対面方式で実施される時事通信の世論調査を見ると、7月の政権支持率は29.3%だったのに対して、今回は29.0%で、0.3ポイントの微減にとどまり、政権不支持率は49.8%から48.3%へと1.5ポイント微減している。この「横ばい」現象を、政権支持率低下の「底」を示していると見るか、それともコロナ禍での五輪開催、感染爆発など諸々のプラス、マイナス要素が組み合わさった結果に過ぎないと見るか、見解は別れるだろう。

今回の調査結果の中で注目されるのは、「若者の菅離れ」傾向だ。共同通信の世論調査結果によると、30代以下の「若年層」の政権支持率は30.1%になり、7月の調査と比較して一気に11.6ポイントも激減した。若年層のうち「女性」による政権支持率は22.7%まで落ち込んでいる。

2012年の政権奪還後に自民党が有力支持層の一つとしてきたのが若年層である。その若年層による支持率が急減しているのだ。ただし今回の共同通信調査では若年層の政権「不支持」率は46.1%に過ぎず、若年層が「アンチ菅政権」に転じたとまでは言えない。だが、ワクチン接種における高齢者優先、企業・大学などでの職域接種の遅れ、イベントやコンパなどの自粛長期化といったコロナ禍対策への若者の不満が着実に政権に向かいつつあるように見える。「パンケーキおじさん効果」は遠い過去の事のようだ。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税

ワールド

イラン産石油購入者に「二次的制裁」、トランプ氏が警

ワールド

トランプ氏、2日に26年度予算公表=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story