コラム

自民大敗、でも石破続投......なら、次の政局はいつ、どんな形で訪れるのか?

2024年10月29日(火)10時31分
石破茂

総選挙で大敗した自民党の石破首相 Takashi AoyamaーPoolーREUTERS

<衆院選で自公の与党が歴史的大敗を喫した。「政治とカネ」の逆風をもろに受けた結果だが、少数与党となった自公政権は石破続投を選択するのか。次の展開を予測する>

27日投開票の総選挙で与党が大敗を喫した。自民党は公示前から56議席減らす191議席、公明党は8議席減の24議席(与党合計215議席)で、衆議院の過半数(233人)に18人足らず、2009年総選挙以来15年ぶりとなる過半数割れに追い込まれた。対する立憲民主党は50議席増の148議席、国民民主党は21議席増の28議席を獲得した。日本維新の会は大阪の全議席を独占したが、全体では6議席減の38議席にとどまった。

選挙結果を三つの点から分析しよう。第一に、石破茂政権が取った「短期決戦戦略」が裏目に出た点だ。石破茂首相は9月27日に自民党総裁に選出され、10月1日に首相に就任した。衆議院の解散(10月9日)は就任から8日後、投開票は26日後。いずれも戦後最短記録で、就任ご祝儀相場を期待する先手必勝策は、野党側に選挙準備の時間、特に立憲民主党と国民民主党あるいは共産党等が候補者調整を行う時間的猶予を与えず、与党に有利となる効果を発揮すると思われた。しかしそれは同時に、自民党側の態勢も準備不十分なまま選挙に突入したことも意味する。

急いては事を仕損じるとも言うが、派閥パーティー券を巡る不記載が指摘された議員の公認方針が二転三転する一方で、能登半島地震の復旧復興策、経済政策、物価対策、少子高齢化対策といった懸案事項は十分に掘り下げられなかった。その結果、立憲民主党を中心とする野党側の争点化戦略が奏功したこともあるが、「政治とカネ」問題が選挙戦において正面からメインストリーム化(主流化)し、自民党に対する有権者の反発が高まっていく流れが出来た。そうした「逆風」の中で、自民党本部が非公認候補者の政党支部に公認候補者と同額の2000万円を支給したという「2000万円問題」が世論を一気に硬化させ、与党敗北の決定打になった。有権者に納得してもらう説明を与党が行う時間はないに等しかった。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story