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「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
「フレキシキュリティー(Flexicurity)」は「Flexibility(柔軟性)」と「Security(安全性)」を合わせた造語で、企業に雇用の柔軟性を、労働者に雇用の安全性を同時に保障する仕組み。原点は19世紀末から20世紀にかけてデンマークに根付いていた「労使の自主協議」にある。
当時のデンマークは急速な工業化と都市化が進み、コペンハーゲンでは印刷・鉄鋼・建築などの分野で労働組合が拡大。労働者側は「8時間労働・賃上げ・組合承認」を要求し、経営者側はロックアウト(工場閉鎖)で対抗していた。
「国を壊すか、制度をつくるか」のタバコ協議
1899年春、デンマーク経営者連盟は全国的なロックアウトに入り、約4〜5万人の労働者が失職する事態に発展。これに対し労組側も全国的なゼネストで応酬したため、デンマークの歴史上初めて「社会的内戦」と呼ばれるほどの対立に陥った。
政府は介入を避け、労使協議に任せた。この不介入は労使双方に自らの行動を統制し社会秩序を保つ責任を自覚させ、後に「9月妥協」と語り継がれる歴史的合意に達する。労使の代表はタバコをくゆらせながら「国を壊すか、制度をつくるか」と語り合ったという逸話が残る。
デンマークは1849年に憲法を制定し、絶対王政から立憲君主制に移行。政府の介入を最小限にとどめ、労使双方が労働条件を自律的に決める協議民主主義の伝統を築いた。政府が一方的に労働法を制定するより労使の合意を尊重する方が社会的信頼を保てると考えたからだ。






