コラム

上手く演奏するか、「ガス室送り」か...文字通り「音楽に命を懸けた」アウシュビッツの女性オーケストラ

2025年03月28日(金)17時09分
アウシュビッツの女性オーケストラ

「女性オーケストラ」に選ばれたことで、50人の女性がアウシュビッツで生き延びた Lasma Artmane/Shutterstock

<ユダヤ民族を絶滅させる「不妊化」の人体実験を進めるナチスに対し、看守やナチス幹部のために演奏するオーケストラはユダヤ女性が生き延びる数少ない「蜘蛛の糸」だった>

[ロンドン発]ポーランド南部のアウシュビッツ強制収容所では40歳以上のユダヤ人女性や少女は即座にガス室に送られた。出産適齢期の女性は極度の放射線を照射されたり、卵巣を外科的に摘出されたり、麻酔なしで子宮にホルムアルデヒド製剤を注射されたりした。

ユダヤ民族を絶滅させるため不妊化の人体実験が行われていた。ユダヤ人女性がアウシュビッツで生き延びる数少ない「蜘蛛の糸」が、ナチス親衛隊(SS)の看守やナチス幹部に音楽を演奏する「女性オーケストラ」に選ばれることだった。この細い糸で50人の女性が生き延びた。

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『アウシュビッツの女性オーケストラ』の著者アン・セバ氏(筆者撮影)

『アウシュビッツの女性オーケストラ』(筆者仮訳、The Women's Orchestra of Auschwitz: A Story of Survival)の著者アン・セバ氏が3月26日、ロンドンの外国特派員協会(FPA)で質疑に応じた。女性たちに生き延びる希望を与えたのはオーケストラの指揮者アルマ・ロゼだった。

「50381」という番号の入れ墨

ウィーンで活躍した作曲家・指揮者グスタフ・マーラーの姪でセレブ・バイオリン奏者アルマは第二次大戦勃発後の1939年末、ロンドンから中立国オランダに戻った。ドイツはオランダを占領し、43年7月、アルマはぎゅうぎゅう詰めの列車でアウシュビッツ送りになる。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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