コラム

エリザベス女王にも愛想を尽かされた?メイ英首相が誰からも嫌われる理由

2017年06月22日(木)15時00分

どうしてメイのリーダーシップはこれほど迷走するのか。メイが内相だった時代に、部下として仕えたことがある元国家公務員の友人にどこに問題があるのか解説してもらった。

「私が仕えた6~7人の内相の中で、メイはリスクを取ることを避け、ネガティブな報道や批判を嫌い、内務省職員や彼女のインナーサークル以外の人を十分に信頼しないという3つの特徴があった。このため、メイは決断を避けるか、決断したとしても極めてまずいものになってしまう」

「内相時代、メイはほとんど何もしていない。最大の理由はメイがリスクを恐れていることだと思う。メイが内相に就任したとき、内務省は非常に大きな問題を抱えていた。移民の数がうまくコントロールされておらず、『イー・ボーダー(電子国境)』と呼ばれる出入国管理システムの構築はどうなるか分からなくなっていた。警察官の不満はたまり、士気は最低だった」

「内務省はもう何年も上級管理職のパフォーマンス不足に悩まされており、私たちはどの部門の歳出をカットするのか、大胆に決断して変化をもたらす指導者を求めていた。こうしたすべての問題を解決するためにはリスクをとる必要があったが、メイにはその覚悟がないことがすぐに明白になってきた」

大局を見ず、失敗を恐れる

「実際、どの決断をするのも難しかったが、メイに決断を求めるため説明資料を送ると細かい質問が山ほど返ってきた。その大半は全く意味のないものだった。質問の山を見れば、メイが大局を見ることができず小局にとらわれすぎ、失敗を怖れるタイプの人間であることは一目瞭然だった」

kimura20170622105803.jpgメイの退陣を求める市民 Masato Kimura

「メイは私たちが行動を起こすために求めている決断を行わないように見えるばかりか、もっともっと細かい質問が付け加えられたペーパーをやり取りして、しばしば数カ月も待たなければならないことがしばしばあった。実際に私が関わった仕事では散々、待たされたあげく、決断は行われないまま、お蔵入りとなってしまった」

「2番目の問題はメイが自分に対してネガティブな報道を嫌っていることだ。何かがうまく行かなくなった時、彼女は閣外担当相(日本でいう副大臣)に質問に答えさせ、自分は陰に隠れていた。陰に隠れることができない時、彼女は自分の立場を守るために自分の部下に責任をなすりつけた。彼女は批判を浴びた時、パニックに陥り、分別を失うのだ」

「3番目の問題は、メイが扱いやすいインナーサークルの人たちを抱え込むのが好きなことだ。外部グループの意見には一切、耳を貸さない。メイが内相に就任してから数年が経ち、内務省でも上級管理職でさえ一体どうなっているか全く知らないことを公に認めることがあった。下級職員は完全に蚊帳の外だった」

「彼女が首相になるのが確実になった時、私は怖れおののいた。彼女は内相時代と同じように取り巻きを集め、すべてをインナーサークルの中で話し合い、決断するのを避けるだろうと疑った。もし彼女が決断したら、それは間違ったものになるだろう。彼女が首相になって、この怖れは現実のものになった。リスク回避、批判への怖れ、周囲への不信頼はメイの性格と切っても切り離せないものだ」

「すべてのリーダーシップはパーソナリティーによって形作られる。メイがそれを変えようと思っても変えることはできないのだ」

この友人はメイが首相になった当初から何度も繰り返し問題を筆者に指摘してきた。それが現実になろうとは夢にも思わなかった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送フーシ派がイスラエル攻撃、イエメンの親イラン武

ワールド

再送-UAEのアブダビで5人負傷、火災も発生 ミサ

ワールド

タイ新政権、来週発足へ アヌティン首相が表明 

ビジネス

中国の大手国有銀3行、25年の利益ほぼ横ばい 不動
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 9
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 10
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story