コラム

英中「黄金時代」の幕開けに、習近平が「抗日」の歴史を繰り返した理由

2015年10月22日(木)10時54分

宮中晩餐会でエリザベス女王のスピーチに聞き入る習近平 Dominic Lipinski-REUTERS

 中国の習近平主席が19日から23日の日程で英国を公式訪問した。習主席の経済圏構想「一帯一路」とセットになっている人民元の国際化を国際金融都市ロンドンが支えるという中国と英国の「黄金時代」の幕開けを告げるためだ。「黄金時代」を象徴するようにエリザベス女王は黒地にゴールドが際立つ儀装馬車で習主席を出迎えた。一方、習主席は第二次大戦を米英と一緒に戦った「抗日」の歴史を持ち出し、中国共産党の正統性を強調するのを忘れなかった。

 20日夜、バッキンガム宮殿で開催された晩餐会は、真紅のドレスにティアラで装ったキャサリン妃も加わり、華やかなムードに包まれた。報道によると、晩餐会のメインメニューは英王室の御用邸のあるスコットランド・バルモラルのシカのロースト。マデイラ・ワインとトリュフのソースが添えられている。中国共産党が「分離主義者」と攻撃するチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の友人、チャールズ皇太子の姿はなかった。欠席の理由は明らかにされていない。が、中国の人権状況に対するせめてもの抗議とみられている。

 エリザベス女王は晩餐会のあいさつで、「改革開放」路線を打ち出した中国の最高指導者、鄧小平氏の名前を持ちだした。「中英連合声明のもと香港を中国の主権下に返還する道を開いたのは一国二制度という鄧氏の先見性に富んだ考え方でした」「それから約30年、鄧氏のビジョンは目覚ましい果実をもたらしました。急激な経済成長と発展は中国国民の生活を変え、数億人が貧困から抜け出しました」

 大戦後の1952年から君主として英中関係を見守り、97年の香港返還という英中関係の転換点に立ち会ったエリザベス女王は、法の支配に基づく国際秩序を構築するため、英中両国は協力する責任を負っていると呼びかけた。今度は、人民服で正装した習主席が答礼に立った。

「抗日」は習体制の基本戦略の一部

「中国には、目標と未来図を共有する人々は、たとえ山であっても海であっても分かつことができないということわざがあります。今年は中国人民が抗日戦争と反ファシスト戦争に勝利した70周年に当たります。中国と英国は同盟国として正義を守るために第二次大戦を戦い、反ファシスト戦争の勝利に多大な貢献をしました」

 習主席は日中戦争で60人の中国人孤児の命を助けた英国人ジャーナリスト、ジョージ・ホッグ(1915~1945年)の功績を称え、旧日本軍の残虐行為を振り返った。これに先立つ英国会議事堂内での演説でも「第二次大戦で24人の中国人がノルマンディー上陸作戦に参加し、当時のウィンストン・チャーチル英首相から感謝されました」と述べ、中国の「抗日」戦争に協力した英国人の名前を挙げた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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