コラム

鬱憤社会、韓国:なぜ多くの韓国人、特に若者は鬱憤を感じることになったのか?

2019年11月11日(月)17時50分

さらなる問題は世の中に不公正が蔓延していることである。朴槿恵前大統領の知人の娘が不正入学したこと等に若者の怒りは燃え上がり、多くの若者がキャンドル集会に参加し大統領の退陣を求めた。その結果誕生したのが現在の文在寅政権である。文在寅大統領(以下、文大統領)は2017年5月10日の大統領就任演説で、「機会は平等であり、過程は公正であり、結果は正義に見合う」社会の実現を約束した。しかしながら、所得主導成長政策は計画した通り成果が出ず、経済は窮地に追い込まれた。

さらに、文政権への期待や信頼が大きく崩れる事件も起きてしまった。法務部長官に任命された曹国氏の資産形成過程の不透明さや娘の不正入学疑惑などが明らかになったことである。曹国氏に対する国民や若者の信頼度が大きかった分だけ失望感も大きかった。多くの若者が怒りや鬱憤を感じたに違いない。

その中で最も鬱憤を感じたのはもしかすると20代男性かも知れない。彼らの文大統領に対する支持率が大きく低下したからである。20代男性の文大統領に対する支持率は2017年6月の87%から2019年10月2日には31%まで低下し、他の年齢階層の支持率を大きく下回っている。

厳しさ増す若者の雇用

20代男性の支持率が大きく低下したもう一つの理由としては若者をめぐる雇用状況があまり改善されていないことが挙げられる。

2018年における若者の失業率は9.5%であり、全体失業率3.8%より2.5倍も高い。また、最近の2019年第3四半期の失業率も8.1%と、全体失業率3.3%を大きく上回っている。近年、全体失業率や若者の失業率は前年同期に比べて改善されているものの、雇用の質は改善されていない。つまり、最近の失業率の低下は政府の財政投入による公共事業や福祉、サービス業における高齢者の短期雇用の増加が影響を与えている可能性が高い。

実際、製造業や働き盛りの30~40代の雇用者数は継続して減少している。さらに、韓国統計庁が10月29日に発表した「2019年経済活動人口調査勤労形態別付加調査」によると、賃金労働者のうち、非正規労働者が占める割合は、2007年3月(36.6%)以来の高い水準である36.4%にまで上昇していることが明らかになった(2018年は33.0%)。


韓国における失業率の推移(年基準)
unemployment1.png

出所)統計庁「経済活動人口」


韓国における失業率の推移(四半期基準)
unemployment2.jpg

出所)統計庁「経済活動人口」

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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