コラム

日韓対立の影響は?韓国経済に打撃大きく、日本経済にもマイナス 日韓関係の回復を強く望む

2019年08月19日(月)18時00分

韓国経済は日本とは異なり、貿易や大企業に対する依存度が高い。

韓国の対GDPの貿易依存度は2017年で68.8%と、日本(28.1%)の2倍以上である。特に、総輸出金額のうち半導体が占める割合は2018年時点で20.9%と最も高く、2位の石油製品の7.7%を大きく上回っている。従って、日本政府が行った半導体材料の韓国への輸出優遇措置の見直しを含めた一連の措置は、輸出依存度が高い韓国経済に大きなダメージを与えるだろう。

7月の韓国の輸出金額は米中貿易摩擦の長期化や中国の景気減速等の影響を受けて、前年同月に比べて11.0%減少し、8カ月連続で減少した。INGグループ、IHSマーケット、モルガン・スタンレーなど多くの市場参加者は、日本政府の韓国への輸出優遇措置の見直しにより、今年の韓国の経済成長率が2%を下回ると予想した。

一方、民間調査によると韓国は、売上高上位10社の合計売上高が対GDP比で44.2%で、日本(24.6%)や米国(11.8%)を大きく上回っている。このように韓国経済は大企業への依存度が高く、大企業を中心とする輸出が減少すると韓国経済全体が減速する恐れが高いと言える。

韓国政府は日本からの輸出品に依存してきた部品等を韓国産に代替するために素材や部品を生産する企業に助成金を出す対策や、日本以外の国から代替材を輸入する等調達先を多様化する方法を企業と共に模索しているものの、質の高い代替材が安定的に供給されるまでには少なくとも1年以上の期間がかかると予想されており、日本政府の輸出優遇の見直しによる混乱は暫くの間は続くと見通されている。

対立の長期化は日本経済にもマイナスの影響

日韓の経済対立は、韓国経済ほどではないものの日本経済にもマイナスの影響を与えるだろう。

韓国から日本への観光客は2018年に約754万人で2017年に比べて5.6%も増加したものの、最近の一連の出来事により韓国からの観光客は急減した。その結果、韓国と日本の地方空港を結ぶ路線の運休や減便が相次いでいる。韓国からの観光客が多い九州を中心とする地方の打撃は大きい。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

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