コラム

すき家やイオンが「インフレなのに値下げ」...これに消費者が「浮かれていられない」理由とは?

2025年11月14日(金)19時10分

値下げができない零細飲食店は顧客を大企業に奪われる

ここで値下げしてしまうと、粗利益が縮小するため、賃金や配当に回す原資がなくなってしまう。それでも、あえて値下げを選択するのは、今後、経営環境がより厳しくなることが予想されるため、体力の弱い競合から顧客を奪い、シェア拡大しようという経営判断が働いていると考えられる。

すき家を展開しているのはゼンショーホールディングスという大手企業だが、同社は経営体力があるので、一時的には苦しい状況になっても値下げを敢行できる。一方、ここまでの体力がないチェーン店や地域の零細飲食店は思い切った値下げを行うことができず、結果として顧客を大企業に奪われてしまう。


他者から顧客を奪うことに成功した大企業は、シェアが高まり競合が少なくなるため、その後、思い切った値上げを行ってこれまでの損失を取り返すことができる。経営学的に見ても、市場拡大が望めない場合、体力のある企業が価格で差別化を行い、シェアを拡大することで利益を確保する戦略は理にかなっている。

一連の値下げの背後には、熾烈な企業の競争原理があり、シェアを奪われ、淘汰されていく小規模事業者で働く従業員に対しては、賃下げ、あるいは失職という形で影響が及ぶ。これは善悪の話ではなく、経済が拡大せず、インフレが進む経済環境下では必然的に生じる現象といってよい。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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