コラム

日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される

2024年10月30日(水)18時54分

企業の会計不正が露呈するタイミングとは?

企業の会計不正が露呈するのは、ほとんどの場合、銀行など金融機関の融資姿勢が変化したタイミングである。

政府は20年、コロナ危機への緊急対策として、実質無利子・無担保で融資を行う、「ゼロゼロ融資」と呼ばれる支援策を実施した。支援策はパニック的な倒産を回避するという点で一定の役割を果たしたものの、経営が行き詰まっている企業を抜本的に救済するための仕組みではない。

企業の中にはゼロゼロ融資の返済がスムーズにできず、金融機関に対して返済猶予などを申し入れるところも出てきた。そうなった場合、銀行側は当該企業の経営状況について、改めて審査を行うことになり、その過程で粉飾決算の事例が表面化する。


こうした動きに拍車をかけそうなのが、日銀による金融正常化である。日銀が利上げを実施したことで、企業に対する貸付金利にも変化が生じている。東京商工リサーチの調査によると、46.3%の企業が既に金利が上がったと回答している。

金融機関による融資条件の変更は、支店長や担当行員の異動などをきっかけに通告されることが多く、場合によっては再審査が行われる。今までは審査対象になっていなかった項目もチェックされることになるので、粉飾が表面化しやすい。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

香港GDP、第3四半期は前年比+3.8% 予想上回

ワールド

北朝鮮の金永南・前最高人民会議常任委員長が死去、9

ワールド

高市首相、来夏に成長戦略策定へ 「危機管理投資」が

ワールド

マクロスコープ:国会本格論戦へ、立憲は消費減税で攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story