コラム

実は中間層は「ほぼ無税」、なのに格差が「下方向」に拡大する異常な構図

2021年11月03日(水)15時08分
下方向への圧力

ILLUSTRATION BY LEDI NUGE/ISTOCK

<日本の格差拡大はアメリカなどと違って中間層が貧困に転落する「下向き」型。そのため格差是正の取り組みもより難しくなっている>

このところ格差問題や分配政策が話題となることが増えている。アメリカではバイデン政権が富裕層課税の強化を打ち出しており、日本でも岸田首相が一時、金融所得課税の強化に言及した(その後、先送りを表明)。富裕層への課税強化は、格差縮小や税収増加につながるのだろうか。

アメリカは激しい競争社会であり、競争に勝ち残った人は多くの富を得られる。所得税も日本ほどの累進課税になっていないので、高額所得者の場合、アメリカのほうが手元に残るお金が多い。経済が好調であることから、減税が何度も実施されており、多くの富裕層が恩恵を受けた。

加えてアメリカでは株式投資が活発なので、多くの国民が株式投資を行っている。株価が上昇すると彼らの資産は一気に増える。

このところアメリカの株価が大きく上昇したことから、富裕層の資産も増えており、上位1%の富裕層が保有する資産額は全米資産の3割を超えた。10年前にはこの比率は29%だったので、お金持ちがさらにお金持ちになっていることが分かる。

アメリカにはビリオネア(資産1000億円以上の超富裕層)が358人存在しており、2位の中国(142人)、3位のドイツ(66人)を圧倒している。ちなみに日本には15人しかおらずアメリカの20分の1以下。50億円以上の超富裕層でもアメリカは約9万人、日本は3000人なので、30分の1である。

アメリカが格差社会であることは間違いなく、中間層との格差も拡大しているが、富める人がさらに豊かになるという上方向の格差である。日本の場合、所得が多い人からより多くの税金を取る累進課税となっていることや、起業があまり活発ではないことなどから、諸外国のような超富裕層は生まれにくい。

日本の中間層はほぼ無税

本来ならあまり格差は拡大しないはずであり、実際、一昔前は一億総中流などと呼ばれていた。だが近年は、非正規雇用の労働者を中心に賃金の低下が著しく、貧困者が増加するという下方向への格差が顕著となっている。

日本の所得税はもともと中間層に優しい仕組みであり、かなりの控除が適用されている。年収400万円のサラリーマンにおける現実の所得税率は1・8%程度しかなく、事実上の無税に近い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

貿易収支、2月は573億円の黒字 対米輸出は3カ月

ビジネス

米航空各社、旺盛な需要報告 燃料価格の高騰「吸収可

ビジネス

世界の航空会社が運賃値上げや路線削減、燃料費高騰で

ワールド

イラン、米との緊張緩和案拒否 政権幹部ラリジャニ氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story