コラム

他人を信用できない「ROM専」日本人のせいで経済が伸びない?

2018年07月24日(火)18時00分

読むだけで発信はほとんどしない(写真はイメージ) filadendron-iStock

<SNS大好きなのに活用し切れていない日本人。この、広域プラットフォームを活用するのに必要な能力こそ、まずリアルな世界での...>

ソーシャルメディアは、もはや社会になくてはならない存在となっているが、日本ではネット空間でのコミュニケーションは所詮、バーチャルなものであるとの意識も根強い。だが、ネット空間でのコミュニケーションのあり方は、実はリアルな世界の延長線上にあり、両者を区別することは難しい。

ネットの利用状況調査の結果を見ると、日本人はリアルな世界でも他人を信用しない傾向が強く、ネットの利用形態もこうした状況を反映した形になっている。見知らぬ他人を「信用」する能力は、資本主義の原動力の一つだが、この部分において日本社会には改善の余地がありそうだ。

日本人のネット利用はもっぱら「ROM専」

総務省が公表した2018年版情報通信白書には、ネット利用をめぐる興味深い調査結果が掲載されている。同白書によると、日本人のソーシャルメディアの利用方法は極端に閲覧するだけの「ROM専」に偏っており、自ら情報を発信している人は少ない。

フェイスブックにおいて自ら積極的に情報発信を行っている日本人はわずか5.5%で、米国(45.7%)、ドイツ(25.9%)、英国(34.9%)と比較すると大きな差が付いている。日本ではフェイブックそのものがあまり普及しておらず、そもそも「利用していない」という人が過半数だが、利用している人の中での比率という点でも、日本は16.7%と各国(40%~50%台)よりも低い。

他の媒体もほぼ同様で、ツイッターで積極的に発言している人は9%となっており米国の半分程度しかいない。ブログ利用者の中で、閲覧のみという人の割合は米国の2倍もある。

日本におけるソーシャルメディアの利用が閲覧に偏っているのだとすると、ネット空間上で飛び交う情報は、少数の人によるものということになり、全体像を示していない可能性が出てくる。ネット空間上の情報や言論に偏りがあるという話は、多くの利用者が気付いていたことではあるだろうが、この調査結果はそれを裏付ける材料の一つといってよいだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の人選、来年初めに発表=トランプ氏

ワールド

プーチン氏、欧州に警告「戦争なら交渉相手も残らず」

ビジネス

ユーロ圏インフレは目標付近で推移、米関税で物価上昇

ワールド

ウクライナのNATO加盟、現時点で合意なし=ルッテ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドローン「グレイシャーク」とは
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story