コラム

世界同時株安でも、日本で楽観的な声が聞こえてくる理由

2015年09月01日(火)16時30分

日本では11月に日本郵政グループの大型IPOが控える(2015年6月の会見での西室社長) Thomas Peter - REUTERS


〔ここに注目〕日本郵政グループの運用資金


 中国発の世界同時株安はアベノミクス相場に湧いていた日本の株式市場を直撃した。今回の急落で投資家の心理はすっかり冷え込んでしまったが、市場関係者の一部からはなぜか楽観的な声が聞こえてくる。その理由は、11月に上場する日本郵政グループが本格的に株式の運用を開始する可能性が高まっているからである。今後の株価動向は、日本郵政グループの運用次第ということなのだが、果たして高値を更新することができるのだろうか。

ここまでの株価上昇は公的年金の「買い」があったから

 アベノミクスがスタートして以降、今回の株安が発生するまでの間、株価はほぼ一本調子で上昇を続けてきた。量的緩和策の実施で円安が進行し、企業業績がかさ上げされたことが主な要因だが、株価上昇の立役者はもう一人いる。それは公的年金による大量の「買い」である。

 安倍政権は、今後インフレが進行する可能性が高くなってきたことから、公的年金の運用方針見直しを進めてきた。昨年10月にまとまった新しい運用方針では、国債中心のポートフォリオから株式中心のポートフォリオへのシフトが決定している。全体の60%を占めていた国債は35%に引き下げられ、国内株の比率は12%から25%に、外国株の比率も12%から25%に引き上げられた。日本株と外国株を合わせると株式の比率は50%に達する。

 公的年金の運用資金は140兆円という巨額なものである。運用方針の見直しが発表される前から株式のシフトは進んでいたといわれており、すでに数兆円の資金が株式市場に流れ込んでいる。東証の時価総額は500兆円台だが、実際に市場に出回る株式の割合は約半分であることを考えると、数兆円の資金流入がもたらす影響は大きい。公的年金の買いが株価上昇に大きく貢献したとみて間違いないだろう。

 当初、目標の25%までの国内株組み入れには時間がかかると思われていたが、フタを開けてみればそうではなかった。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は8月27日、4~6月期の運用実績を発表したが、6月末時点における株式の構成比率はすでに23.3%に達しており、目標の25%に近づきつつある。つまりここから先は、大規模な公的年金による買いは期待できないことになる(ルール上はさらに比率を上げることも可能)。

 4~6月期の収益額は2兆6489億円を確保しているが、7~9月期は今回の株価下落でマイナスに転じる可能性もある。このまま株価低迷が続けば、国民の大切な財産である年金積立金が大幅に減少してしまう。また来年夏には参院選も控えており、安倍政権としては株安の年金財政への波及は絶対に避けたいシナリオである。どんな手段を使っても株価を維持したいというのがホンネだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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