なぜロシアは今も「苦難のロシア」であり続けているのか
しかしこうした社会も経済が悪くなってくると、お偉方の特権が急に目障りになってくる。ロシアの大衆は、石油も天然ガスも本当は自分たちのものだと思っているから、この特権層に飛び掛かり、身ぐるみ剝ごうとするのである。これが1991年8月、ソ連共産党が解体された背景だ。
西欧、アメリカ、日本では産業革命とともに企業に雇われ、かなりの収入を得る人間たちが、支配層と民衆の間に中産階級として立ち現れた。彼らは支配層並みの権利、特に投票権を要求して民主主義を形作る。ロシアにも中産階級はいる。しかし彼らは民主主義の礎にはなっていない。なぜか? それはロシアの中産階級の多くが政府予算で生計を立てているからである。
プーチンはかつて、「ロシアでは労働人口の3分の1は政府予算から給料を得ている」と言ったことがある。それは軍隊、警察、消防、医師、教師の人々だ。彼らの家族、そして国営企業の従業員を含めると、ロシアでは実に人口の3分の2程度は政府予算で生きていることになる。こうした人たちは、政府に対する批判勢力にはなりにくい。
では、若者はロシアの明るい星か? ロシアでは平均寿命が低いために、青年層が多い国になっている。34歳以下の者が全人口の43%を占める(2019年)。若者は怖いもの知らずだから、権威主義とは縁遠い。モスクワのライブ・バーなどに行くと、そこの雰囲気はアメリカやヨーロッパと全く同じ。自由で明るく、活気に満ちている。こういう若者たちが社会に出れば、と思う。
しかし、若者はソ連時代にも自由で明るく、活気に満ちていた。それが社会に出ると勢いがなくなり、酒に溺れて廃人同様になる者も出てくる。それだけロシアの組織は権威主義、専制性のDNAが強く、若者も押しつぶしてしまうのだろう。
それどころか近年、西側に対する敵意を漂わせる若者が増えてきた。ロシアでは2014年のクリミア併合以降、西側からの制裁もあって生活水準が右肩下がりになっているが、その生活悪化の原因は西側がロシアを理由もなしに圧迫したことに求められるようになった。街を歩いていると、人々のいら立ちや憎悪が漂い、空気がおろし器のように肌をすり下ろすような気がしたものだ。
ロシアは自由と民主主義、そして市場経済をベースとする近代文明の世界に加わる機会を失った。これは、ロシアの歴史が集権主義への流れを再生産するからだし、また米ロのエリート、諜報機関がいつも冷戦時代の対立関係に戻ろうとする形状記憶合金のような性質を持っているからでもある。
ロシアはやはり、「苦難のロシア」なのだ。
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