コラム

サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る「男子ならあり得ない」光景の数々

2023年08月30日(水)14時15分

僕が女子サッカーに注目しだしたきっかけの1つは、なでしこジャパンだった。2012年ロンドン五輪で、あらゆる競技のチケットが売り切れだったのに、聖地ウェンブリー・スタジアムで行われる、2011年W杯優勝チーム(!)の準決勝試合、次いで決勝(‼)のチケットが割と簡単に手に入ったのは、僕にとって大きな「成果」だった。

何十年もの間、サッカー界は黒人選手に対し、「巧み」で「天賦の才」があるが白人選手ほど頭脳的でない、などと見なす問題を抱えていた(よく使われた婉曲表現は、彼らは「戦術的に無知」)。この偏見に対抗しようと、メディアは黒人サッカー選手を解説者に昇格させることに力を入れ、彼らの解説を 「明晰」だと持ち上げた (あたかも自らの得意分野で明瞭に語れることが驚きの事実であるかのように)。

引退した元女子選手たちも、女子のみならず男子の試合の解説をするようになると、反発を招いた。まるで男子サッカーは彼女らの理解を超えたものだとでも言うように。

2018年に黒人元男子選手パトリス・エブラが黒人元女子選手のエニ・アルコのサッカー解説に拍手を送り、「よくできました」と言ったことは、そのあまりの皮肉さゆえに話題になった。その直後、エブラは男性解説者に「本当にすごい。彼女は男の僕たちよりサッカーをよく分かっているから、僕たちはもう用済みだな! 本当に感動したよ」と話した。おそらく彼は称賛したつもりだったのだろうが、あたかも賢いことをした子供に言ってやるような誉め方だった。

とはいえ、マイナス面ばかりに目を向けるのは間違いだ。概して、このW杯はいいニュースになった。男子イングランド代表が最後にW杯で優勝したのは1966年のこと。2023年は、それ以来で最もイングランドサッカーが優勝に近づいた年になった。

優勝を狙える位置にまで勝ち進んだとき、僕たちイングランド人は宗教的なまでの熱情を込めて言う。「フットボールが帰ってくる......ついに帰ってくる」  

まあ、次回こそは、だ。

ニューズウィーク日本版 トランプのイラン攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月10号(3月3日発売)は「トランプのイラン攻撃」特集。核・ミサイル開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。アメリカとイランの全面戦争は始まるのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

国家石油備蓄の放出、政府が鹿児島志布志市の基地に準

ワールド

イラン大統領、自身の発言を「敵が誤解」=国営テレビ

ワールド

王外相、米中対話の重要性強調 イラン情勢巡り軍事行

ワールド

トランプ氏、女子学校攻撃は「イランの仕業」 証拠は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 7
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 8
    女性の顔にできた「ニキビ」が実は......医師が「皮…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story