コラム

ちょっと「残念」だった2014年の改革

2014年12月22日(月)10時32分

 数年前、僕はけっこう楽しめる小説を読んだ。その中で、ある学者が「予期せぬ結果の法則」というテーマで解説記事を書く。「何ごとも計画どおりには成功しない」というのが、彼の文章のキーフレーズだ。

 本人も驚いたことに、その記事は政府内で大絶賛され、政策アドバイザーになってほしいとの依頼まで舞い込む。

 だが後に彼は、政府に持ち上げられた本当の理由に気付いて愕然とすることになる。何ごとも計画通りには成功しない、という彼の主張が確かなら、政府にとっては何一つ成し遂げられないことの最高の口実になる――というわけだ。

 僕は最近、この話を思い出していた。今年、英保守党が2つの改革を推し進めてきたからだ。どちらも必要不可欠で、表面上は理にかなったもの。だがどちらも、ほんのわずかでも改善したとは言い難い。むしろ事態は悪化したと言えるかもしれない。

 まずはISA(個人貯蓄口座)の改革。個人の資産形成を促すイギリス独自のシステムで、上限額までの株式投資信託や預金の利子が非課税になる口座だ(日本のNISA〔少額投資非課税制度〕の手本になった制度)。始まってから20年近い制度だから、ジョージ・オズボーン財務相は簡素化、拡大するための更新が必要だと判断した。

■課税口座のほうがまだマシに

 拠出額の上限金額は大幅に引き上げられた(年間1万1000ポンド前後から1万5000ポンドになった)。さらに重要なことに、上限金額の全額を預金型に拠出できるようになる。以前は預金型に拠出できるのは上限金額の半分(6000ポンド以下)で、残り半分かそれ以上は、株式型のほうに拠出しなければならなかった。このルールは、退職年齢が近く再び株式市場が低迷したら耐えきれないという「リスクを嫌う」人々には特に不人気だった。ISA口座の拠出額は、株式型と預金型の間で自由に移動させることもできる。

 僕は新たなISA改革を歓迎したし、保守党はよくやってくれたと思った。堅実に貯蓄をしようという人をきちんと守る制度に見えたからだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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