コラム

『鬼滅の刃』のイスラム教「音声使用」が完全アウトの理由

2019年12月05日(木)15時45分

神の法を犯し神や預言者ムハンマドを冒瀆した、と見なされたことを契機に発生した事件は過去に多くある。サルマン・ラシュディ著『悪魔の詩』を訳した五十嵐一・筑波大学助教授は1991年、何者かに喉を切り裂かれて殺害された。預言者ムハンマドの風刺画を掲載したフランスのシャルリ・エブド社は2015年、アルカイダ系組織に襲撃され風刺画家ら12人が死亡した。

制作会社は「イスラム教ならびにイスラム教徒の皆様の心を傷つける、または冒瀆するという意図は決してございませんでした」と釈明している。だが神への冒瀆を死に値する重罪と信じるイスラム教徒に、この言い訳は通用しない。

日本のメディアや専門家はこれまで、「イスラム教は平和の宗教」といった理想論しか語ってこなかった。しかしこれからの時代を生きる日本人には、イスラム教の論理と価値観はわれわれとは異なるという現実を受け止め、できる限り衝突を回避し、共存していくことが求められている。

<本誌2019年12月10日号掲載>

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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