コラム

「偽情報・誤情報」研究が直面する5つの課題

2024年12月29日(日)07時38分

課題2 偽・誤情報問題は政治的である

アメリカでのこの分野の研究の後退と、研究機関や研究者へのバッシングが示すように、この領域の研究は政治的な問題とは切り離せない。共和党を中心とする右派によって多くの研究が阻害された。


また、逆に予算が集まりやすく、政治的に優先されるテーマは研究が進みやすくなる。このテーマはIT、医療、経済、人種、宗教、教育、軍事など他方面に関係しており、政治的な利用がしやすい。偽・誤情報問題は高度に政治的問題なのだ。

また、研究者の多くは政治とは離れた中立的な立場で研究を行おうとしているが、予算、データの入手、その後のキャリアなど政治的な問題が山積みなのである。

冒頭に書いた、「効果についてはともかくとして、記録を残すという意味でやる意義はあると思います」という回答は、当該省庁の施策を言外で支持している。

繰り返しになるが、その方のことを非難するつもりは毛頭ない。そもそも「効果が検証されていない対策をなぜ行うんでしょう?」という質問自体もきわめて政治的と言うこともできる。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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