コラム

世界に広がるK-POPアクティビストの輪──ミャンマーで軍事政権抗議活動を行う

2021年11月02日(火)19時00分

盗聴の危険の少ない暗号化通信できるTelegram

ミャンマーでもフェイクニュースが原因となる事件が起きるようになった。2016年にはミャンマーのフェイスブック利用者は1千万人、ネット利用者は85%に達し、SNSが差別の温床となり、ヘイトを増幅した。フェイスブックはなかなか有効な対策を打たず、ロイターは2018年8月15日の記事のトップに大きく「HATEBOOK」と掲げた。

現在、ミャンマーではフェイスブックやツイッターの使用は制限されているが、VPNを使うことで使い続けている者も多く、フェイスブックはいまだに人気である。しかし、K-POPアクティビストは盗聴の危険の少ない暗号化通信できるTelegramなどのメッセージングアプリを利用することが多くなっている。ミャンマーに限らず、権威主義国家で活動を行っている多くのアクティビストが暗号化された通信を行うようになっている。

もちろん暗号化されたメッセージングアプリのコミュニケーションでもフェイクニュースが流れることはあるが、発信元に直接確認できることやフェイスブックに比べるとその量が少ないことから大きな問題ではないという。

K-POPアクティビストたちはミャンマーで行われている人権侵害に関する情報をTelegramで収集し、Google Driveにまとめて共有している。

日本とっても他人事ではない

K-POPアクティビストたちは大きな危機に直面している。暗号化通信できるアプリに政府が利用できるバックドアを求める動きが表面化しているのだ。もし、暗号化した通信を当局がバックドアを介して検閲することができるようになれば抗議活動に大きなダメージとなる。

以前の記事でご紹介したように日本もアメリカ、インドなどとともにバックドア設置を推進している側の国である(ZD-Net)。

これまで、いくつかの日本企業がミャンマーの軍部に間接的に利益を提供することになっていたことが明らかになっているなど(東洋経済Plus)、日本はミャンマーの人権危機に対して目をつぶり(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)、経済権益を優先してきた経緯がある。ミャンマーが直面している問題は実は日本の人権外交が問われる重要な問題でもある。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反落、ダウ349ドル安 エヌビディア

ワールド

加アルバータ州、日本の石油精製への投資検討 脱米国

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、先週の急落から持ち直し 今

ビジネス

短期需要対応のFRBバランスシート拡大は回避すべき
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story