子供のケンカではない――トランプ外交の「限界」と欧州の「覚悟」とは?【note限定公開記事】
No Agreement in Sight
トランプは即時停戦より和平合意を急ぐ(18日、ホワイトハウス) DAN SCAVINO@SCAVINO47ーX.COM
<「戦争は子供のケンカのようなもの」――そう語るトランプ大統領。だが、ウクライナ戦争はそんな単純な話ではない。派手な会談を好むトランプ外交の限界が、いま鮮明になっている>
▼目次
1.ウクライナ戦争を理解しないトランプ
2.焦点はウクライナの安全保障
3.欧州に迫る決断の時
1.ウクライナ戦争を理解しないトランプ
ドナルド・トランプ米大統領は、大きな注目を浴びる会合が大好きだ。
ここ数週間は、ウクライナ戦争の当事国であるロシアとウクライナの首脳と直接会談を持ち、第2次大戦後にヨーロッパで起きた最も破壊的な戦争に幕引きを図ろうとしてきた。
だが現在、ウクライナ戦争に終止符が打たれる見通しは、こうしたトランプの外交努力が始まる前と同じくらい乏しい。
なぜか。それはロシアとウクライナには、それぞれどうしても譲れない目標があるからだ。
ウクライナは安全と主権と独立が欲しい。ロシアはウクライナを従属させ、その運命を意のままに操りたい。
欧州諸国のリーダーはそれを知っている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も知っている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も知っている。だが、トランプはこの事実を理解している気配がない。
トランプにとって、戦争とは暴力と流血と殺戮であり、そこに合理的な根拠は存在しない。戦争を子供のケンカになぞらえることさえある。
だが、戦争に合理性がないとは限らない。戦争とは、政治的対立の延長線上にあり、ある国が政治目標を達成する手段として、外交や交渉よりも戦闘のほうが有効だと判断したとき、始まることがある。
2014年2月にプーチンがウクライナ領であるクリミア半島を不当に占領し、さらに東部ドンバス地方に民兵を送り込んだのは、まさにそうした計算があったからだ。
プーチンは長い間、冷戦終結後の世界秩序はロシアに不利なものであり、ロシアが大国に返り咲いた暁には、それを覆してやると考えてきた。
さらにプーチンは、ウクライナやベラルーシなどの旧ソ連諸国に対して、ソ連のような影響力を持つことも願ってきた。
かつてソ連の影響圏だった中央ヨーロッパと東ヨーロッパについても、西側(つまりNATO)の影響を排除するまで、プーチンは満足しないだろう。
トランプと、先日アラスカで開かれた米ロ首脳会談の立役者であるアメリカのスティーブ・ウィトコフ中東担当特使が、プーチンの思考を正確に理解しているかは分からない。
プーチンは、8月初旬にモスクワを訪問したウィトコフに対して、ロシアがドンバス地方全体を獲得できるなら、ウクライナ北部の一部を返還してもいいと提案した。
ウィトコフは、プーチンのこの「譲歩」が突破口になると考えたようだが、とんでもない。
ウクライナは過去11年以上にわたり、ドンバス地方の中心地ドネツクを守るために戦ってきた。ここは多くのウクライナ人が住んでいるほか、首都キーウなどにつながる主要道路防衛の要となる。
だから、ウクライナがドンバスを手放すことはあり得ない。
2.焦点はウクライナの安全保障

トランプとプーチンはアラスカで、戦争後のウクライナの安全保障問題も取り上げたようだ。プーチンは、この点については、今回の危機の「根本原因」が解決しない限り何も起こらないと、会談後の記者会見で断言した。
「ウクライナ(戦争)の解決が持続的かつ長期的であるためには、この危機の全ての根本原因が取り除かれること、ロシアの正当な懸念が全て考慮されること、そして、ヨーロッパと世界全体で安全保障圏の公平なバランスが回復されなければならない」
プーチンは「全ての根本原因」の内容を具体的には語らなかったが、ウクライナに対する安全の保証は、きっぱりとはねつけたかに見えた。
だが、18日にホワイトハウスに集まったゼレンスキーとヨーロッパ諸国首脳らは、トランプが戦後のウクライナの安全を保証することに意欲を示した瞬間を逃さなかった。
ウィトコフも17日にCNNに対し、ウクライナに「第5条の保護」(NATOの集団的安全保障)に相当する「強固な安全」を保証することにトランプが同意したと語った。
さらにプーチンも、この保証がロシアで「立法化される」ことに同意したという。
どのような和平合意になろうと、ウクライナに強力な安全を保証することが条件に含まれるべきだという議論は、ウクライナ戦争が始まったときからなされてきた。
ウクライナはそのような保証が絶対不可欠だと主張し、ヨーロッパ諸国とアメリカも、その提供を約束してきた。
問題は、保証の内容をどのようなものにするかだ。
【note限定公開記事】子供のケンカではない――トランプ外交の「限界」と欧州の「覚悟」とは?
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