コラム

コスプレは規制だらけ、サウジで初のコミコン開催

2017年02月27日(月)17時43分

@Saudicomiccon-Twitterより

<映画館すらない国、サウジアラビアで初めて開催されたポップカルチャーの祭典。独自の規制もあったが、拍子抜けするほど「ふつう」で、社会の変化を感じさせた>

2月16日から18日の3日間、サウジアラビア西部の商業都市ジェッダで、サウジアラビアでははじめてのコミコン、「サウジ・コミコン(Saudi Comic Con)」が開かれた(公式Twitterアカウントは@Saudicomiccon、公式ウェブサイトはhttp://saudicomiccon.com/)。コミコン(日本では「コミケ」が一般的)について今さら説明する必要はないと思うが、一言でいえば、「マンガ、アニメーション、ゲーム、SF・ホラー映画などポップカルチャーの祭典」である。

ご存じのかたも多いと思うが、サウジアラビアではこうしたエンターテインメントに関してはかなり規制が多い。そもそもサウジ国内には映画館すらないし、人の姿を映したり、神のことを忘れさせたりするような映像や音楽は許されないとか、欧米の文化はみんな腐敗堕落しているなどと考える人も少なくないのだ。なにしろ、1960年代にテレビ局を導入したとき、国内各地でそれに反対する暴動が発生し、死者まで出したというお国柄である。

また、女性は運転免許をもてず、男性近親者の後見人がいないと、外出もままならない。もちろん、不特定多数が行きかう場所に出るときは、アバーァ(アバーヤ)と呼ばれる黒い布を頭からすっぽりと被って、体全体を隠さねばならない。当然、学校は男女別学だし、レストランなども家族席と独身男性用席が厳格にわけられている。

さて、そんな国でコミコンが開催されたのである。わたし自身も、実際に参加することはできないものの、怖いものみたさも含め、わくわくしながら、はじまるのを楽しみにしていた。

まあ、いざはじまってみると、拍子抜けするほど、ふつうというか、サウジ人も、他の国のコミック・ファン、SFファンとそれほどかわらないんだということがあらためて確認できた。

初日だけで7000人が参加し、入場のための行列が100メートル以上になったと報じられており、サウジ国内のメディアでもずいぶん大きく取り上げられていた。YouTubeなどで確認したかぎりでは、コスプレに興じたり、ハリウッド・スターに熱狂する若者たちは万国共通なのであろう(今回の目玉ゲストはマッツ・ミケルセン)。

【参考記事】死と隣り合わせの「暴走ドリフト」がサウジで大流行

プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究顧問。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授、日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長等を経て、現職。早稲田大学客員上級研究員を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

主要行の決算に注目、政府閉鎖でデータ不足の中=今週

ワールド

中国、レアアース規制報復巡り米を「偽善的」と非難 

ワールド

カタール政府職員が自動車事故で死亡、エジプトで=大

ワールド

米高裁、シカゴでの州兵配備認めず 地裁の一時差し止
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリカを「一人負け」の道に導く...中国は大笑い
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 10
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story