コラム

ゴルバチョフを憎むロシア国民...彼らが気付いていない、国に残された「遺産」

2022年09月13日(火)18時12分

89年には、東ドイツの議会で演説し、「社会の在り方はその国の人々が決めるべきだ。そして、社会の在り方は多様であるべきだ」と述べた。この翌月、大勢の東ドイツ国民と西ドイツ国民が東西ベルリンを隔てていた「ベルリンの壁」を突き崩し、ソ連による東ヨーロッパ支配の終焉と東西ドイツの統一に道が開けた。

ゴルバチョフの悲劇は、自身が推進した改革によりソ連が崩壊し、自身も91年のクーデターにより権力の座を追われる結果になったことだ。大半のロシア人はソ連崩壊を招き、国のGDPを大幅に縮小させたことを理由に、ゴルバチョフの時代を「失敗」と見なしている。

しかし、45年続いた冷戦を終わらせ、東ヨーロッパの9300万人を解放し、14カ国の旧ソ連構成国の1億5200万人に独立をもたらしたのは、ゴルバチョフにほかならない。

現在のロシアは、KGB出身の独裁者ウラジーミル・プーチンの強権的支配の下にある。プーチンはゴルバチョフの政策を次々と廃止したが、プーチン統治下のロシアでも、多くの人は個人の自由が尊重される社会を望んでいる。

ゴルバチョフの遺産は、間違いなく残っている。

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グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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