コラム

安倍氏国葬、「献花に2万人超」は本当に「驚くほど多い」のか?

2022年09月29日(木)22時05分

2012年末に衆院選挙での圧勝を経て第二次安倍政権が誕生すると、保守派による集会は一旦下火になった。待望の第二次安倍政権が誕生したことによる安ど感が、街頭に出る足を鈍らせたのである。

しかしながら第二次安倍政権が誕生して5年目の2017年5月3日(憲法の日)に挙行された日本会議主催(共催として民間憲法臨調、美しい日本の憲法をつくる国民の会)の『第19回公開憲法フォーラム』は、日本国憲法施行から70年という節目の年であり、安倍総理自身が会場にビデオメッセージを送るというサプライズ的積極姿勢(現役総理大臣・自民党総裁が同会にビデオメッセージを送ったのは史上初めてであった)を見せたため、第二次安倍政権下で最大規模の保守派集会となった。

この集会には東京会場(東京都平河町の砂防会館大ホール)だけで1,150人が参加した。それだけではなく、大阪、仙台、鹿児島、群馬、沖縄など全国40か所の会場で同時中継がなされた。全てを合算するとその参加者は2,000以上ないし3,000人前後と推察される。

このように保守派の集会は、街頭での行進(行列)が伴う場合を含めて、往時10,000人程度の参加者が見られることは何ら珍しいことではない。繰り返すように、国葬での一般献花は政治的保守を意味するものでは必ずしもないが、前述の通り「安倍元総理のやることなすことすべてが"絶対に"気に食わない」という人は参加しない場合が多いと思われるから、比較対象として援用しても差し支えなかろう。

「献花に2万人超」という数字と物理的な行列を見て、「驚き」とか「日本国民の中に実は国葬に賛成する人も多かった」というニュアンスで報道するのであれば、前述したそれも「電通を反日企業と思っている日本人が実は多かった」とか「次の選挙で安倍再登板を願う日本人がこれだけいるのは驚き」と伝えても良いはずだが、当時そういった報道は一切なかった。私が「健忘症」としたのはこのためである。要するに切り取り方、報道する側の視点の問題であり、2万超という数字は「平常運転」」とも「驚き」ともどちらでも解釈することができる。

ましてや、今回の国葬は安倍元総理が亡くなってから早い段階で岸田総理が実行を表明したもので、国葬日程が9月27日と発表されたのは2022年7月22日である。日程が公表されてから2ヵ月以上が経過しており、その賛否両論がテレビ・ラジオ・新聞でさんざん取り上げられ、結果的に嫌というほど9月27日の国葬はアナウンスされていた。にもかかわらず、「最終的に25,889人」という数字は、私には極めて少ないものに映る。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story