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イランの報復に米警戒、攻撃から一夜明け 「体制転換」にトランプ氏言及

2025年06月23日(月)11時30分

 米軍のイラン核施設攻撃から一夜明けた22日、米政権ではトランプ大統領がなぜイランで体制転換が起きないのかと疑問を呈する投稿を行ったほか、高官はイランに報復しないよう警告した。写真は米国防総省で記者会見するヘグセス国防長官。バージニア州アーリントンで撮影。国防総省提供(2025年 ロイター)

[ワシントン 22日 ロイター] - 米軍のイラン核施設攻撃から一夜明けた22日、米政権ではトランプ大統領がなぜイランで体制転換が起きないのかと疑問を呈する投稿を行ったほか、高官はイランに報復しないよう警告した。

トランプ氏は自身のソーシャルメディアに「『体制転換』という言葉を使うのは政治的に正しくないが、もし現在のイランの体制が『イランを再び偉大に(MAKE IRAN GREAT AGAIN)』することができないのであれば、なぜ体制転換が起きないのだろうか???MIGA!!!」と書き込んだ。

投稿に先立っては、バンス副大統領やヘグセス国防長官ら政権幹部がイランの体制転換のために行動したのではないと強調していた。

ヘグセス氏は記者会見で「今回も、これからも体制転換を目的とすることはない」と明言。一方、イランが示唆する報復攻撃について、実行に移すべきではないと警告した。

バンス氏はNBCのインタビューで「われわれはイランと戦争をしているのではない。イランの核開発計画と戦争をしている」とし、「事態を長引かせたくはない。核開発を終わらせ、長期的な解決策についてイラン側と協議したい」と語った。

米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長によると、「ミッドナイト・ハンマー」と名付けられた作戦には地中貫通弾(バンカーバスター)14発のほか、トマホーク巡航ミサイル20発以上、また軍用機125機余りが投入された。B2爆撃機7機が米国からイランに18時間かけて飛行、バンカーバスターを投下したという。

<施設への被害>

ケイン氏は初期の被害評価で核施設3カ所全てが極めて深刻な被害を受け、破壊されたとの分析も示した。ただ、イランの核能力が残っているかどうかは推測を控えた。

専門家は商業衛星画像からフォルドゥの地下核施設と遠心分離機が深刻な被害を受け、破壊された可能性もあるとの見方を示す一方、確認はできていないと述べた。

元国連核査察官のデービッド・オルブライト科学国際安全保障研究所所長は「大型貫通爆弾(MOP)で突き抜けた」とし、「施設はおそらく破壊されただろう」と述べた。

しかし、CNAコーポレーションの衛星画像専門準研究員デッカー・エベレス氏は、地下の破壊については確認できていないと指摘。数百台の遠心分離機が設置された空間は「あまりに深い場所にあるため、衛星画像を基に被害の程度を評価することはできない」と述べた。

イランは今回のような攻撃から身を守るため、核施設の多くをフォルドウの山岳地帯を含む地下深くに埋設している。

衛星画像には地中貫通弾(バンカーバスター)が山を貫通したと思われる6つの穴が写っている。

トランプ氏はイラン核施設への最大の損害について、地下深部で発生したとの認識を示した。

<地域の米軍保護強化>

米軍による核施設攻撃に対し、イランはイスラエルに向けたミサイル攻撃で応じた。テルアビブでは多数の負傷者が出たほか、建物が倒壊した。

米国土安全保障省は「米国における脅威の高まり」を警告した。

イランはこれまで、米軍基地への攻撃や世界の石油供給遮断といった米国に対する報復の脅しを実行に移していないが、こうした状況は続かないかもしれない。

イランのアラグチ外相はイスタンブールでの会見で、報復への選択肢を検討しており、これを実行した後に外交による対応を考慮すると指摘。「米国は国際法を尊重しておらず、脅迫と武力という言葉しか理解していない」と非難した。

ケイン氏は、米軍はイラクやシリアを含むこの地域の部隊保護を強化したと述べた。

ニューヨークやワシントンを含むいくつかの米都市では22日午後、散発的に反戦デモが行われた。

一部の米民主・共和両党議員は、トランプ大統領によるイランへの軍事力行使を抑制し、中東紛争への米国の関与を回避するよう議会に求めた。

国連安全保障理事会は米国のイラン核施設攻撃を協議する緊急会合を開き、ロシア、中国、パキスタンが無条件の即時停戦を求める決議案を提示した。会合はイランが要請。同国は「この露骨かつ違法な侵略行為に対処し、可能な限り最も強い言葉で非難」するよう求めた。

ロイター
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