注目のキーワード

コラム

「プーチンさんを悪く言わないで!」という「陰謀論」動画の正体

2022年03月09日(水)18時56分

プーチンはネオコンのターゲットにされた被害者? Yuri Kochetkov/REUTERS

<ヒトラーは追い詰められてポーランドに侵攻した、プーチンのウクライナに侵攻もそうだ、新型コロナウイルスは世界支配のためアメリカがやった、等々の陰謀論を信じる人々は、「世界は複雑であり、一言で説明することなどできない」という現実から逃避しているのではないか>

ロシア軍によるウクライナ侵攻(正確には再侵攻と言った方が正しいが、便宜上こう書く)が始まってから、当然大義なきこの侵攻に対し、世界はおろか日本でも激しいプーチン批判が沸き起こっている。

そのような中、プーチン批判者の私の元にも「一方的にプーチンが悪いとか、ロシアが悪いと言わないでください!」というメッセージが主としてSNS上で続々と届く。このようなメッセージの中には、ほとんど必ず、パターンは若干異なる(全編か、切り抜きか、再編集かなど)にせよ或る2本の動画が引用されている

この2本の動画というのは、"「ひとりがたり馬渕睦夫」#40 ゲスト:篠原常一郎 vol.5 ロシアとウクライナの真実・それを知れば世界がわかる・日本のメディアが伝えない理由"(2020年3月21日にYouTubeに公開)と、"【桜無門関】馬渕睦夫×水島総 第36回「『危機』を取り巻く諸勢力~ネオコンに進駐されたウクライナ、トルコで懲りたNATO、残り時間が気になるバイデンと習近平」"(同2022年2月24日)である。

今次ウクライナ侵攻について、「プーチン・ロシア政府の目線で考えてみる」という冷静な分析や論考を除いて、「ウクライナの真実を知ってください!プーチン大統領だけが悪いのではありません!」という趣旨で展開される真偽が怪しい言説の熱源は、間違いなくこの2本の動画である(他にも微細なものはあるが、主力はこれである)。

この2本の動画では何が語られているのだろうか。共通するのは、2本とも駐ウクライナ兼モルドバ大使であった、馬渕睦夫氏が主役であることだ。重要な事なので繰り返すと、馬渕氏はかつて駐ウクライナ大使であった人物である。

ディープステートとユダヤロビー

ではひとつ目の、"「ひとりがたり馬渕睦夫」#40~"の方からみていくと、元日本共産党員であったジャーナリスト・篠原常一郎氏との対談形式で進められる。主要部分を抜粋してみよう(強調部分筆者)。


馬渕:実は、やはり今は保守論壇が、保守系の人も、日本のおそらく9割ぐらいが私の印象ではロシア嫌い、プーチン嫌いという状況ではないかとみておりまして。それは個人の趣味の問題でもあるんですが、しかし、事実を知ったうえで、いろいろ判断すべきだと、前にも申し上げて、その点では篠原さんも同じご意見であったと承知しておりますけれども(中略)実は、今プーチン大統領が直面している問題というのは、(中略)つまりプーチンが悪者であるという報道が全世界的に行われているわけですが(中略)こういう人たち(筆者中:オリガルヒ...ロシアの新興財閥)は、はっきり申し上げますが、みなユダヤ系なんですね

我々はね、結局ユダヤ系について、あるいはユダヤロビーと言っても良いんですが、私はよく国際ユダヤ勢力と言っていますが。それについて議論が事実上行われないんですね。これをやると陰謀論だと言われて、みんな逃げちゃう。保守系の人もみんな逃げるんですが、これは議論をシャットアウトする煙幕みたいなもので。それでは世界の理解が進まないんですね。(中略)

ユダヤ系が結局、ソ連が崩壊して、あたらめてロシアの実権を握ったと。で、それに対して彼らの手からロシア人の手に取り戻したのがプーチン大統領なんですね(笑)。ということはいまトランプ大統領が、ディープステートの手から自分たちの手に、つまりアメリカのピープルの手にアメリカ政治を取り戻そうとしているのと、同じ構図なんです。これがですね、今の世界情勢を理解するうえで、私は基本というかABCだと思ってるんですね。これができない、というのは今の日本だけではありませんが、言論界の宿痾になっているんではないかと、残念な気がしてならないんですね。

そういうことで私はプーチン大統領がいま直面している国内的な政敵というのは誰かというと、ロシアの中のユダヤロビーだと。トランプ大統領も同じようにアメリカの中のユダヤロビーと、正確にはグローバルユダヤロビーですね、グローバリストのユダヤロビーですが、と対決していると。そういう構図にですね、奇しくもロシアもアメリカも、同じ大統領が、両大統領が同じ問題に直面していると思えてならないんですね。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

ロシュ、抗体抗がん剤複合体への投資拡大に懐疑的=C

ビジネス

再送-東芝あす株主総会、取締役選任案 アクティビス

ワールド

米ファイザー改良ワクチン、オミクロン株への免疫反応

ビジネス

ガルーダ・インドネシアの債務再編計画、裁判所承認

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:沖縄の論点

2022年6月28日号(6/21発売)

「本土復帰50年」を迎えた、オキナワの語られていない語られるべき問題

人気ランキング

  • 1

    メーガン妃「いじめ調査」結果はクロか? 「次は差別カードを切るはず」と王室作家

  • 2

    逆子の自然分娩「レクチャー映像」がトラウマ級

  • 3

    【映像】夫婦と愛犬、すんでのところで猛追クマから逃れる

  • 4

    メーガン妃はイギリスで、キャサリン妃との関係修復…

  • 5

    アメリカで「転売ヤー」問題が少ない理由

  • 6

    女性の耳から小さなカニ、ピンセットで摘出される動…

  • 7

    BTS「V」熱愛報道は後輩グループの「醜聞隠し」のた…

  • 8

    世界が見るウクライナ戦争の姿はフェイク? 「戦争PR…

  • 9

    可愛くないはずがない...それでも女王が曾孫リリベッ…

  • 10

    ヘンリー王子夫妻、娘リリベットの誕生日会に参加し…

  • 1

    メーガン妃はイギリスで、キャサリン妃との関係修復を狙ったが失敗した(王室専門家)

  • 2

    アメリカで「転売ヤー」問題が少ない理由

  • 3

    【動画】青唐辛子にかぶりついた少年、案の定ひどく悶える

  • 4

    メーガン妃「いじめ調査」結果はクロか? 「次は差別…

  • 5

    最も明るく、最も急速に成長するブラックホール発見…

  • 6

    冷遇されたヘンリー王子ついに「称号返上」を検討と…

  • 7

    可愛くないはずがない...それでも女王が曾孫リリベッ…

  • 8

    中国に「平伏する」ハリウッドで、『トップガン』が…

  • 9

    逆子の自然分娩「レクチャー映像」がトラウマ級

  • 10

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 1

    治験中のがん新療法、18人全員の腫瘍が6ヶ月で消失 専門医「前代未聞」

  • 2

    女性を踏み殺したゾウ、葬儀に現れ遺体を執拗に踏みつけ去る インド

  • 3

    遺体ばかりか負傷兵も置き去り──ロシア軍指揮官のプロ意識がさらに低下(米戦争研究所)

  • 4

    【映像】突進してくるゾウの赤ちゃんが「ちっとも怖…

  • 5

    英ルイ王子の「やんちゃ」ぶりで、キャサリン妃に「…

  • 6

    極超音速ミサイル「ツィルコン」はウクライナの戦況…

  • 7

    インド人初のK-POPスター誕生へ 4000人から選ばれた…

  • 8

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 9

    中国側に「寝返った」ジャッキー・チェン、「父親が…

  • 10

    英ヘンリー王子夫妻、軽い扱いに「激怒」してイベン…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中