コラム

高市早苗氏はなぜ敗北したか―ネット保守の過激すぎる応援がアダに

2021年10月01日(金)21時42分

それまで「父・河野洋平とは違う」と賞賛される向きだった河野氏は、「反日政治家」とレッテルを貼られた。とりわけ河野一郎・河野洋平・河野太郎の所謂「河野三代」を「河野反日(売国)三代」と言い換える言説が飛び回った。「河野太郎は河野洋平とは違う」という評価を獲得した前述「極めて無礼」発言は無かったことにされ、河野三代を同一人格として見做し、批判する大キャンペーンが開始されたのである。

4】「河野反日(売国)三代」というキャンペーン

しかし、一郎・洋平・太郎はそれぞれ別人格であり、これらを「一族だから」という理由だけで批判するのは筋違いではないか、と思うのが通常である。仮にある政治家の政治信条が、血族の原理でその父祖にまで遡って求められるのなら、そもそも高市氏の政治信条も親や祖先から受け継いだものであると解するのが相当だが、ご存知の通り高市氏は世襲ではない。この矛盾を彼らはどう"解決"したのか。好例として分かりやすいのが次のネット番組である。

総裁選も終盤にかかる2021年9月25日に公開された、"【岩田温】河野太郎ファミリー「売国」三代記【WiLL増刊号#652】"での、政治学者でユーチューバーの岩田温氏の解説がそれだ。このネット番組は月刊誌『WiLL』の付属ネット番組『WiLL増刊号』での一幕であり、その中で岩田氏は、「絶対に、高市早苗さんが自民党総裁に、そして総理大臣になって欲しいという願望を抱いております」と前置きしたうえで、次のように河野批判を展開した。


岩田)河野談話というものは今なお尾をひきずっている訳ですね。で、これを出した。お父さんがやった事と息子がやったことというのは関係がないんだ、という議論はね、一般論としては成り立ちます。

しかしね、政治家の場合はね、その政治家としてですね、お父さんの影響力なしに彼がね、政治家としてなれたのか。そしてその企業の問題もいろいろありますけれども、あれお父さんが非常に影響力を持っている会社ですよね。もっといえばあれお爺さんの時からの会社でしょ。(中略)彼はですね、河野さん(注:河野一郎)というのは、やっぱり親ソであったと、というのがね、わたくしは大きな問題であったと思うんですよ。

親ソであったというのはですね、要するに北方領土の問題とかですね、その時に極めて妥協的であったと。で、彼はね、吉田茂から反米的であるということで非常に批判されていたわけですよ。そのね三代ですよ。私はねこういったら大変失礼かもしれないけども、河野売国三代みたいに見えるわけですよ。その三代目(注:河野太郎)ですよ。これはちょっと問題があるな、と思っているんですね。(中略)お父さんと全く関係がないとは言えないと思うんですよ」

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

感謝祭当日オンライン売上高約64億ドル、AI活用急

ワールド

ドイツ首相、ガソリン車などの販売禁止の緩和を要請 

ワールド

米印貿易協定「合意に近い」、インド高官が年内締結に

ワールド

ロシア、ワッツアップの全面遮断警告 法律順守しなけ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story