コラム

高市早苗氏はなぜ敗北したか―ネット保守の過激すぎる応援がアダに

2021年10月01日(金)21時42分

当時、総裁選公示前の段階では大メディアが各種の世論調査から"河野優勢"の報道がなされた。一方、ネット上のアンケートでは「次期総裁にふさわしい候補」として高市氏への支持が圧倒的に出力され、「大メディアの世論調査と、ネット世論のギャップ」に疑問の声が噴出した。

当然の事この理屈は、2002年から台頭してきたネット保守がインターネット空間を寡占した結果、ネット空間は少数のアクティブユーザーによる「タカ派、右派」的価値観に偏重していたから不思議な事ではない。結果として前者の「大メディアの世論調査」こそが概ね正しかったことが証明されたものの、ネット保守は"河野優勢"を懐疑し、それが即"河野批判"につながって一大運動となった。

なぜネット保守は、高市氏の支援とセットで河野批判を展開したのか。第一に、ネット保守から蛇蝎の如く嫌われていた石破茂氏が河野氏支持に回ったのが大きい(詳細は、拙稿"石破茂氏はなぜ「保守」に嫌われるのか?~自民党きっての国防通が保守界隈から批判される理由~"20.9.12,参照のこと)。石破氏が所謂"小石河連合"を組んだと報道されたことで、河野氏までもその批判に巻き込まれた格好となった。

3】元々ネット保守は河野氏に対して好意的だった

しかしネット保守における河野氏への嫌悪感は、実は元来ほとんど存在していなかった。むしろ賞賛されていた位である。河野氏は第二次安倍政権下で外務大臣(平29年8月~令元9月)の要職を務めた。その中、2019年7月19日に、韓国人元徴用工訴訟を巡る問題で、"南官杓(ナムグァンピョ)駐日韓国大使を外務省に呼び出し、韓国の対応は「極めて無礼だ」と異例の厳しい表現で抗議"(19.7.20,読売新聞)した。これを受けて嫌韓姿勢が色濃いネット保守は歓喜し、「河野太郎は、(河野談話を出した)父・河野洋平とはまったく違う」「見直した」などの反応が踊った。19年のこの時点では、ネット保守はむしろ河野支持であった

ところがすでに述べた通り、今次総裁選で高市氏が出馬表明し、対抗馬と見做す河野氏の優勢が報じられると、その背後に石破氏が協力していることから、一挙にネット保守は河野氏の批判に転換する。まるでオセロの白が黒に次々とひっくり返るように、ネット保守による高市支持は河野批判と完全にセットで展開されるようになる。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    筋肉の「強さ」は分解から始まる...自重トレーニング…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story