コラム

複利は魔法。その恩恵を受けるために重要なのは「好き嫌い」(武田双雲×藤野英人)

2021年05月24日(月)16時05分

だが、「好きなことをしてお金を稼ぐ」と言うと世間では反発されがちだ。なぜなら多くの人にとって、お金は時間や体力、感情など、自分の中の何かを切り売りしたことによる対価だから。そうして得るお金もまた誰かから切り売りされたものなので、お金が増えるほど、その人の痛みと苦しみも増え続ける。

巨額の資金を運用する藤野氏は、「人の気はお金に乗り移る」と指摘する。「お金は人生の痛みの交換」という価値観から抜け出さない限り、いくらお金を稼いでも幸せにはなれないという。

そのため、自分や相手の機嫌を悪くしてまで仕事や勉強をする必要はない、と2人は意見を一致させた。

特に藤野氏が疑問視するのは、コンビニで買い物をしても店員に「ありがとう」と言わないような消費者意識だ。「お金を払う側が偉い」という深層心理が透けて見えるお金を受け取っても、店員側の機嫌が良くなることはない。

藤野氏はお金を使って、いかに良い気分や雰囲気を社会につくれるのかがファンドマネージャーとしての課題だと話す。

この意見に対し、武田氏は自身が「感謝オタク」であると話し始めた。

「きれいごとを言うと叩かれやすいが、自分は油断すると感謝できない人間だと知っているので、あえて積極的に感謝をしにいこうと決めている。感謝はすごく難しい。すぐに当たり前だと思ってしまうから」

また、武田氏は「書道はお手本通りに書くべきだ」といった、無理やり秩序立てていく気持ち悪さが美術や芸術の授業にある、と指摘する。しかしこれは芸術と逆行している。身の回りの物事をどれだけ新鮮な目で見られるかが大事なのだと語った。

これに対し、「初期化する力が必要。会社を評価するときも社名や売上で分かった気になってしまうのは非常に危険だ」と、藤野氏も賛同。「会社でも人間でも、見方を変えればいつでも新しい発見ができる。偏見や言葉で当てはめた瞬間に感動をサボってしまう」

お金をはじめ、あらゆる物事にはプラス面もマイナス面もある。その中で、いかに正のエネルギーが循環するように過ごすかが、人生を楽しむ秘訣のようだ。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:金正恩氏の娘ジュエ氏、訪中同行で国際デビ

ワールド

ロシア、ウクライナに大規模空爆 ポーランドがスクラ

ワールド

ロ朝首脳会談始まる、北朝鮮のロシア派兵にプーチン大

ワールド

台湾総統、強権的な指導者崇拝を批判 中国軍事パレー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story