コラム

韓寒吼える「恥を知れ、百度」

2011年03月29日(火)18時43分

 4月にグーグルの新CEOに就任する予定のグーグル共同創業者ラリー・ペイジには、「世界中の情報をデジタル化する」という夢がある。だが先週、その夢に大きな障害が立ちはだかった。

 あらゆる書籍をデジタル化してネット上で公開しようとするグーグルは08年、そうした行為を著作権侵害だと訴えていた出版社や作家ら和解し、作品がオンラインで閲覧される度に作家や出版社に著作権料に入る仕組みをつくることにしていた。だが先週、ニューヨーク連邦控訴審はこの和解を認めない判決を下し、グーグルにさらに厳格な著作権保護策を要求。グーグルの電子図書館構想は宙に浮いてしまった。

 太平洋を挟んだ中国でも、ある意味で似たような論争が巻き起こっている。中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」が、作者の許可なくコンテンツをサイト上で無料公開しているとして、50人以上の作家らが著作権侵害を訴えているのだ。

■28歳の若者の正義感と皮肉が冴える

 今のところ「訴え」は法廷闘争ではなく、メールによる抗議運動の形をとっている。百度が批判されているのは、自社サイトで著作権侵害が横行しているのを容認している点だ(情報を無料で閲覧できるようにして世界をよりよい場所に変えるというラリー・ペイジ流の理想主義を、百度のロビン・リーCEOが持ち合わせているとは、誰も考えていない)。

 中国随一の有名ブロガー、韓寒(ハンハン、28歳)にとって、グーグルのニュースが飛び込んできたこのタイミングは、百度の著作権問題に一石を投じる絶好のチャンスだ。プロのラリーレーサーでもある韓寒は、米外交誌フォーリン・ポリシーで昨年の「世界の思想家100人」に選ばれた人物で、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストになるとも噂されている。

 独特の正義感と皮肉を交え、混沌の中から明確な教訓を切り取るのが韓寒の得意技。さらに、さまざまな意見や利害の対立を、特定の個人──今回はロビン・リー──への非難に集約させるテクニックも合わせもっている。

■無料と共有を旗印にする検索サイトのまやかし

 今後、アメリカのメディアに登場する機会が増えそうな韓寒を知るチャンスでもあるから、彼の3月25日付けのブログ記事「百度よ、恥を知れ」を見てみよう。


 百度は、インターネットの精神は「無料」と「共有」だと主張しているが、私はこの考え方に賛成しない。私に言わせれば、インターネットの真髄は「自由」と「情報を広めること」だ。

 もし無料であることがネットの精神であるなら、百度はなぜ、検索結果を装って表示される広告に課金するのか。もし共有することがネットの精神であるなら、中国随一の億万長者になったロビン・リーはなぜ、個人と会社の富を我々に分け与えないのか。

 商品を無料で提供し、それを目当てにサイトにやってくるユーザーの数を売りにして広告料を取る、というのが百度のビジネスモデルだ。それ自体に問題はないが、そうした商品の作り手も生活の糧を得る必要があることを忘れないでもらいたい。

 共有とは、皆が互いに自分のものを持ち寄り、その中で気に入ったものを持ち帰るという行為のはずだ。だが現状では、我々は皆、他人の持ち物を持ち寄り、それを分け合っている。それが、百度流の「無料の商品を共有する」ということなのだ。

 友よ、私には中国人作家たちの苦境がよくわかる。彼らの多くは2年、3年を費やして1冊の本を完成させる。1冊につき、印税は1〜2万元(1500〜3000ドル)。月平均ではせいぜい800元(120ドル)だ。

 600億元(90億ドル)の資産をもつロビン・リーにも注文がある。中国の出版業界と作家たちが生活資金を稼げる余地を、どうか残しておいてほしい。どんなにわずかでも。


 正直言って、彼のロジックにはわかりにくいところもあるが、それでも危険を冒して発言を続ける点は称賛に値すると、私は思う。

──クリスティナ・ラーソン
[米国東部時間2011年03月28日(月)11時17分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 29/03/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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