コラム

「料理をする男性」ほど超加工食品が好き? 日本人と超加工食品の最新事情

2023年12月19日(火)16時15分

先行研究から、これらへの回答は男女間に著しい差があることが予想されたので、すべての分析は男女別に行われました。

平均年齢は男性50.3歳、女性50.0歳で、女性は男性よりも超加工食品の摂取量が有意に低く、栄養の知識、料理スキル、食事スキルのスコアが有意に高いという結果が現れました。食品選択の価値観は、男性では感覚的魅力、女性では安全性で最高平均スコアを示しました。食行動の特性では、男女とも「食事を楽しむこと」が最高平均スコアになりました。

さらに深く分析すると、女性については、年齢が高く、食の安全性の重視し、栄養の知識が高く、満腹感を感じにくい人ほど超加工食品の摂取量が少ないことが分かりました。対して男性では、調理技術が高く、満腹感を感じやすい人ほど超加工食品の摂取量が多いことが分かりました。

男性の結果には婚姻が関係?

この結果を知って、みなさんはどう思うでしょうか。

女性の結果に異論のある人は少ないでしょう。一方、男性の結果では、「満腹感を感じやすい人ほど超加工食品の摂取量が多い」ことは、「手っ取り早くお腹を満たしたいから超加工食品を食べる」などの場面を想定すれば感覚的に納得できます。では、なぜ「調理技術の高い人ほど超加工食品を食べる」のでしょうか。

研究チームは、婚姻が絡んでいるのではないかと考えています。つまり、既婚男性は家族に食事を用意してもらうために調理技術は低いが、家庭料理にありつけるため超加工食品の摂取量は低くなる、という解釈です。もっとも、今回の研究では婚姻状況に関する情報は入手しなかったので、潜在的な影響は分からないといいます。

一方、筆者はどちらかというと独身男性を想定して、「調理技術に自信がある男性は日常的に自炊をしているが、炒飯や肉野菜炒めを作るときに、豚肉そのものよりも安さや味の濃さを求めてウィンナーやベーコンといった超加工食品を使う頻度が高そう。むしろ、まったく料理をしない男性のほうが、ラーメン屋に行ったりスーパーの惣菜を買ったりするから、意外と超加工食品の摂取が少ないのではないか」と推察しました。

みなさんはどう思いますか。研究結果の背景を予想したり、調査を自分に当てはめたりして、食生活を見直してみるのもよいかもしれませんね。

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブラジルGDP、第2四半期は0.4%増

ワールド

米軍、カリブ海でベネズエラ発の船舶攻撃 麻薬積載=

ビジネス

アンソロピック企業価値1830億ドル、直近の資金調

ビジネス

米財務長官、次期FRB議長候補の面接を5日開始=W
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story