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OISTが燃料不要な「量子エンジン」の設計・製作に成功 エネルギー新時代の幕開けか
今回のOISTの研究チームは、極低温下の条件のもと実験室内で動作する超小型の量子エンジンを製作して概念実証を行いました。
自然界に存在する粒子は、量子的性質に基づいて、フェルミオン(フェルミ粒子)かボソン(ボース粒子)のどちらかに分類されます。フェルミオンに属する粒子には、電子や陽子、中性子があります。一方、ボソンに属する粒子には光子や質量を担うヒッグス粒子、湯川秀樹博士に予言された中間子などがあります。
絶対零度に近い極低温の世界では、粒子は量子力学的な効果が重要となります。ボソンはフェルミオンよりも低いエネルギー状態にあり、両者のエネルギー差をエンジンの動力に利用することができます。つまり、ボソンをフェルミオンに変化させ、また元に戻すことが、量子エンジンの動力になります。
ボソンとフェルミオンの違いは、スピン角運動量がディラック定数の整数倍か半整数倍かです。なので、フェルミオンをボソンに変えるには、2つのフェルミオンを組み合わせて分子にします。この新しい分子はディラック定数の整数倍のスピン角運動量なので、ボソンになります。
研究を主導したOISTのトーマス・ブッシュ教授は、新しくできた分子を分解することで、フェルミオンを再び取り出すことができて、これを繰り返し行うことで熱を使わずにエンジンを動かせると説明します。さらに、ドイツの共同研究チームが構築した現在の実験の設定では、エンジンの効率を最大25%高められることが分かったといいます。
動力源の概念を抜本的に変える可能性
もっとも、今後、自動車などに使える実用的な量子エンジンを作るためには、いくつかのステップを乗り越えなければなりません。たとえば、量子エンジンはフェルミオンとボソンのエネルギー差を用いるため、極低温状態を保たなければなりません。冷却のためには、かなりのエネルギーが必要となります。それでも、実用化されれば、動力源の概念を抜本的に変えてエネルギー革命を起こす可能性があります。
研究チームは、今後、基礎的な研究を進めて性能を高めたり、バッテリーやセンサーなど、他の機器への応用の可能性について調査したりする予定だといいます。
SFやファンタジー小説には「スチームパンク」と呼ばれる、イギリスのヴィクトリア朝やエドワード朝の雰囲気をモチーフとして蒸気機関が動力のベースとなっている世界観が1ジャンルとして認知されています。日本の作品では、映画「ハウルの動く城」やゲーム「ファイナルファンタジーⅥ」が代表例です。
今、学問の世界では、量子エンジンのような19世紀の熱力学と現代の量子論を融合した研究分野に対して「量子スチームパンク」という言葉が浸透しつつあります。小説や映画の題材になる日も近いかもしれませんね。

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