コラム

アフリカに「モビリティ革命」を仕掛ける日本人の猛者...スタートアップ起業家、佐々木裕馬の正体

2023年10月17日(火)08時00分

早めのメンテナンスを提案することで、より故障しにくくすることも可能だ。バッテリーをシェアリング事業にすることで、電力へのアクセスが安定しない地域にもユーザー層を拡大できるというメリットもある。日本で展開する電動キックボードのLuupは、所有するのではなくキックボードをシェアする仕組みだ。佐々木氏のLuupでの経験が、Dodaiで生かされることになる。アフリカが電動モビリティ革命の最先端に躍り出るわけだ。

ただ当然ながら何もかもが順風満帆というわけではない。問題は日常茶飯事のように発生する。われわれがエチオピアに向かって飛行機に乗るという当日に、エチオピア政府が二輪車の利用を禁止した、という連絡が入ってきた。発売になったばかりなのに、利用が禁止とは...国内北部で紛争が続いており、武器の輸送に二輪車が多用されるのだとか。これを取り締まる目的で、禁止命令が出たようだ。

佐々木氏は特段、焦っている様子もなかった。「まあ、そのうち解除されるでしょう」。事実、街中で多くの二輪車が走っているのを目撃したし、警察が取り締まっている様子もなかった。またDodaiのスクーターの売れ行きは減速するどころか、飛ぶように売れていた。そして、禁止令はあっさり数週間で解除された。

Dodaiの幹部たちに話を聞いても、動揺している人はいなかった。佐々木氏を完全に信頼している様子だった。佐々木氏のいないところで、社員の本音を探ってみた。

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Dodaiで勤務する社員

「最初は結構、社長と意見が衝突しましたよ」前出のシンガポール人エンジニアが語ってくれた。「彼も僕も言い出したら聞かないところがあるので。でも毎日のように彼と議論を続けていると、お互いの強みをお互いが理解できるようになりました。今はお互いを信頼して、伸び伸びと仕事ができているように思います」

政府との交渉役を担当しているエチオピア人幹部に、上司としての佐々木氏のいいところ、悪いところを教えてもらった。「いいところは、ビジョンと行動力でしょうか。あと本気でエチオピアの将来のために頑張ってくれているところも素晴らしいですね。悪いところですか? 政府の幹部と会うときでも、服装がカジュアル過ぎるところですかね」と笑った。「5年後にもう一度、エチオピアに来てください。その時は街のあちらこちらでDodaiの電動スクーターを見かけることができると思いますよ。いや、アフリカのあちらこちらの国でDodaiのスクーターが走り回ってると思いますね」

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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