コラム

AIエージェントの時代はどこまできているのか

2024年05月07日(火)12時40分
(写真はイメージです) julien Tromeur-Unsplash

(写真はイメージです) julien Tromeur-Unsplash

<AIエージェントがどの程度パソコンを操作できるかを探る「OSWorld」論文が注目を集めている>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

今年のAI業界のホットなテーマの1つはAIエージェント。そんな中、エージェントに関する1つの論文が話題になっている。

「OSWorld」というタイトルの論文で、現段階のAIエージェントはどの程度優秀なのかを計測しているもの。著者は香港大学のTao Yu氏を初めとする研究者の国際チーム。

AIエージェントの定義はいろいろあるが、この論文の中では「置かれた環境をセンサーなどで把握し、論理的に行動するAI」のように定義されている。つまり人間のようにパソコンを自在に操作できるAIということだ。

確かに最近のAIは、いろいろなパソコン操作が既に可能だ。もちろんパソコン上のボタンを押すことも、文字、数字を入力できる。アプリやソフトウェアのマニュアルを読んで理解し、アプリやソフトを操作することも可能。プログラミングもある程度できるし、検索、文書生成もできる。テキストを音声に変換し、音声ボットとして電話もできる。営業トークもできる。顧客との電話のやり取りで得た情報を表計算ソフトに入力することもできる。

つまりこの方向でAIが進化すれば、人間がパソコンを使って行う仕事のほとんどは、AIでもできるようになる。AIにできない仕事を探すほうが難しくなるのではないだろうか。そうなればAIエージェントは世界経済に非常に大きな影響を与えることが予測される。今われわれはそうした時代の入り口に立っていると言えそうだ。

ではそうした時代に向けて、今後AIはどのように進化していかなけらばならないだろうか。一般的には3つの技術の進化の方向が挙げられている。

一番大きく進化しなければならないのはReason(論理的思考能力)だろう。人間から与えられた仕事をこなすために、何をどう実行すべきかを考える力だ。1つの大きな仕事をこなすために、その仕事をいくつかのタスクに分解することも必要になってくる。

もうまもなくリリースされると噂されているOpenAIの次期LLM(大規模言語モデル)GPT-5では、論理的思考が大きく進化すると言われている。またOpenAI以外の有力AI企業も同様の能力を持つLLMを開発しているとみられている。

2つ目はVision、つまりコンピューターの画面を見て意味を理解する能力だ。どのボタンをクリックすれば、前のページに戻れるのか、どのボタンを押せば注文を確定できるのかなど、画面上の画像の意味を理解する能力だ。

AppleもこのVisionに関する論文を発表して話題になっている。Appleが発表したのはスマホの画面を理解して操作できるFerret-UIという技術。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国航空会社2社、エアバス機購入計画発表 約82億

ワールド

コロンビア、26年最低賃金を約23%引き上げ イン

ワールド

アルゼンチン大統領、来年4月か5月に英国訪問

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃訓練開始 演習2日目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story