コラム

AppleとOpenAIの提携は何を意味するのか

2024年06月13日(木)09時50分
Appleの開発者向け年次総会WWDCでAppleとOpenAIの提携が発表された Solen Feyissa-Unsplash

Appleの開発者向け年次総会WWDCでAppleとOpenAIの提携が発表された Solen Feyissa-Unsplash

<WWDCの基調講演では、提携に関する言及が控えめだったが、実際の協力関係はどの程度のものなのだろうか? AI新聞編集長の湯川鶴章氏が解説する>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

Appleの開発者向け年次総会WWDCで、AppleとOpenAIの提携が発表された。この提携はどの程度の協力関係なのだろうか。今までもiPhone上にChatGPTのアプリはあった。それとどう違うのだろうか。

発表文を見てみよう。Apple側は「iPhone、iPad、Macの中核に強力な生成モデルを組み込んだパーソナルインテリジェンスシステム、Apple Intelligenceを紹介」という発表文の一番後ろに「ChatGPTがAppleプラットフォーム全体に統合」と提携について控えめに言及している。

提携の内容としては、Siriに質問すると、「ChatGPT を使用しますか」と聞き返してきて、ChatGPTを選択できるようになった、ということが一つ。もう一つは、iPhone上で文章入力する際にChatGPTの支援を受けることができる、というものだ。

WWDCの基調講演の中でも提携への言及は控えめだった。

「世の中には、便利な人工知能ツールがあります。ツール間を行き来することなくこのような外部モデルを みなさんに使っていただけるように私たちはユーザーのエクスペリエンスにこれを組み込みます。そして、最高のパートナーとスタートします。この分野のパイオニアとして市場を牽引する OpenAIのChatGPT、そしてGPT-4oです」。

あくまでも、数あるパートナー企業の1社という位置付けで、OSに組み込むという表現ではなく、ユーザーのエクスペリエンスに組み込むという表現を使っている。

一方のOpenAI側は、正式の発表文では「ChatGPTをAppleのOSのエクスペリエンスに統合」としてAppleの表現と合わせているものの、OpenAIの公式X(旧twitter)では「ChatGPTをAppleのOSに統合する」と書いている。

「エクスペリエンスへの統合」と「OSへの統合」では、ニュアンスがかなり異なる。OSへの統合となると、Apple製品のソフトの根幹部分にOpenAIの技術が入り込むということになる。

今回Appleは生成AIを活かした仕組みをいろいろと発表してきた。それらの仕組みにOpenAIの技術が組み込まれてはいないのだろうか。

イーロン・マスク氏はAppleとOpenAIの提携を受けてX(旧Twitter)で、「Appleは自分たちのAIを作れるほど賢くない」とつぶやいている。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日韓首脳、17日にカナダで会談へ=韓国大統領府

ビジネス

中国自動車メーカー、ゼロエミッション車市場でリード

ビジネス

国債補完供給、減額措置の要件緩和の対象銘柄を拡充=

ビジネス

JERA、新たなLNG契約締結必要 電力需要対応で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story