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新型コロナウイルス

新型コロナウイルス最大の脅威は中国政府の隠蔽工作

TURNING CRISIS INTO CATASTROPHE

2020年2月27日(木)18時30分
ローリー・ギャレット(科学ジャーナリスト)

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勤務先の中心医院前に置かれた李医師の写真と花束 REUTERS

2月5日までに武漢市では、火葬場の処理能力が、増え続ける死者に追い付かなくなった。封鎖によって新型肺炎の患者だけでなく、HIVや腎疾患などで薬や治療を必要とする人々の命も危なくなった。病院には彼らを受け入れる余裕はなく、医薬品は底を突いた。こうした患者の正確な数や死者数を知るすべもない。

警鐘を鳴らした医師の死

そして2月7日未明、新型肺炎について最初に警鐘を鳴らした李医師が新型肺炎で死亡した。彼の死をめぐって国中で巻き起こる怒りの声。悲嘆に暮れる人々。これに中国政府はSNSの検閲と、アカウントの凍結で対抗した。英エコノミスト誌の上海特派員セシリア・ワンは、政府の対応を批判する投稿が消去される様子をツイッターで逐一報告した。

2月8日、習は党中央から湖北省に派遣する対策チームのナンバー2に、側近の陳一新(チェン・イーシン)を任命した。医学や科学には門外漢の、司法・公安部門を統括する中央政法委員会の秘書長だ。陳は武漢市に乗り込むと、それまで湖北省や武漢市で対策の陣頭指揮を執っていた人々を解任した。

2月9日、政府発表の新たな感染者の数が減り始めた。12日には急増するのだが、それまでの3日間に政府からは、新型肺炎のピークは過ぎたから国民は仕事に戻り、経済の立て直しに努めよというメッセージが送られていた。

しかし、中国のどこを見ても終息する気配は見られない。武漢市に隣接する黄岡市では、市の共産党指導者が1日に検査できる人数はわずか900人だと語った。一方、市内には1万3000人もの発熱患者があふれていた。

中国の公衆衛生当局によると、死亡率は武漢市では約4%、武漢市の西に位置する天門市では約5%だという。だがそもそも正確な感染者数が不明なので、死亡率も信用できない。検査人数が非常に少ない上、検査キットの扱いが難しいので、検査結果も信用できない。

急ごしらえの隔離病棟の安全性にも疑問が生じた。ベッドの並べ方が近過ぎ、トイレは共同だ。コロナウイルスは糞便やトイレの下水管を通じても感染するリスクがある。

2月10日には武漢市の人口の5%(約50万人)に感染リスクがあると指摘され、習は湖北省保健当局の幹部2人を更迭。3日後には同省の党幹部の首もすげ替えた。

香港大学のガブリエル・レオン教授は、このまま放置すれば地球の総人口の60%以上が感染する恐れがあると指摘する。仮に死亡率が1%だとしても、世界の3大パンデミック(14世紀のペスト、1918年のスペイン風邪、現代のエイズ)に匹敵する死者数となる。

そうであれば、ワクチンの開発を待っていられない。ワクチンができるのは早くても1年以上先だ。

残念ながら中国政府は最悪の対応を取り、小さな危機を大惨事に変えてしまった。膨大なデータを提供してはいるが、信用できない。中国共産党には検閲と脅迫、そして忖度の体質が染み付いている。だから私たちは最悪の事態に備えるしかない。感染の実態も知り得ぬままで。

From Foreign Policy Magazine

<2020年3月3日号掲載>

【参考記事】新型コロナウイルスの「不都合な真実」を隠す中国政府の病弊
【参考記事】中国の新型コロナウイルス危機は「チェルノブイリ級」と世界が囁き始めた

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