最新記事
栄養

カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョコレート革命」

Make Chocolate Healthier

2024年6月12日(水)16時57分
ロビン・ホワイト(本誌自然・環境担当)
カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョコレート革命」

今まで無駄にしていたカカオの果肉や殻も使用 WS STUDIO/ISTOCK

<果肉を加えたらチョコがもっとヘルシーに。血糖値の急上昇を防ぐ食物繊維をより多く含み、食べたときの幸福感は従来品と変わらない新レシピが誕生>

チョコを愛する世界中の人に朗報。本場ヨーロッパの科学者たちが、チョコレートを今よりちょこっとヘルシーにする方法を見つけた。

チョコレートの原料は熱帯産フルーツのカカオ。白っぽい果肉に包まれた豆(ビーンズ)を発酵させ、豆だけを取り出してローストし、加工して製品にする。つまり、果肉は捨てられている。

もったいない。果肉に含まれる豊富な栄養素をもっと有効に使えないか。そう考えたスイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究チームが、同国の老舗チョコレート会社「フェルクリン」と組んでフルーティーなチョコの製法を考案し、オンライン誌「ネイチャー・フード」に5月21日付で発表した

市販のチョコレートは豆から抽出したカカオマスを主原料としているが、研究チームはカカオの果肉(パルプ)に注目した。果肉を加えたチョコレートは従来品よりも食物繊維を多く含む一方、飽和脂肪酸は少なくなるという。

論文の筆頭執筆者キム・ミシュラによれば、「食物繊維は生理学的に有益なもので、腸の活動を自然に整える役割を果たし、チョコレートを食べた後に血糖値が急上昇するのも防いでくれる。一方で飽和脂肪酸の取りすぎが体に悪く、心疾患のリスクを高めることは広く知られている」。

砂糖なしでも十分な甘さ

そこで研究チームは、カカオの外殻の内側にある柔らかい部分と果肉を混ぜて処理し、ゼリー状にしてみた。すると、これが大変に甘かった。そうであれば、通常のチョコレートに添加されている砂糖の代わりに使える可能性がある。

しかし問題があった。カカオマスに加える果肉ゼリーが多すぎると舌触りが悪く、少なすぎると甘さを感じられなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米経済「「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向性

ビジネス

再送MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに

ワールド

サウジ、6000億ドルの対米投資に合意 1兆ドルに

ビジネス

米中小企業、26年業績改善に楽観的 74%が増収見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中