最新記事

感染症

中国の新型コロナウイルス危機は「チェルノブイリ級」と世界が囁き始めた

Political Scientist: History Will See Coronavirus as China's Chernobyl

2020年2月14日(金)16時15分
カシュミラ・ガンダー

ウイルスに汚染された医療廃棄物と防護服を着た労働者(四川省成都、2月8日) cnsphoto/REUTERS

<危険な真実を隠したまま致命的な病をまき散らし、危機が収束した後も当局が何を隠してたかの追及と苦悩が続く>

中国・湖北省の武漢市を中心に感染が拡大している新型コロナウイルスは、遂に死者数が1400人を突破した。アメリカのある政治科学者は、これはまさに中国にとって「チェルノブイリ級」の危機だと指摘する。

WHO(世界保健機関)が2月11日に「COVID-19」と名付けた同ウイルスの感染者は13日、中国全体で6万3000人を超え、死者の数は1380人にのぼった。死者の多くがウイルスの発生源とされる湖北省に集中している。同日には日本でも初めて、同ウイルスの感染による死者が確認された。中国本土以外で死者が出たのは、フィリピンと香港に次いで3カ所目だ。

世界全体では、アメリカをはじめ25を超える国と地域に感染が広がっている。

coronavirus-covid19-statistia-2019ncov.jpg

湖北省十堰市は12日から、住民に外出を禁じるなどの「戦時体制」を導入。武漢市では今も、ウイルスの封じ込めを目的とした事実上の都市封鎖が続いている。

シカゴ大学の杨大利教授(政治科学)は、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストのインタビューに対して、新型コロナウイルスの感染拡大は、1986年に旧ソ連(現ウクライナ)で発生したチェルノブイリ原発事故の時のような惨状を招くだろうと語った。

「習近平の責任は重い」

日本の福島一原発事故までは世界最悪の原発事故と言われ、数十人が死亡。数十万の周辺住民が避難を余儀なくされた。WHOはこの事故について、「核の安全性に対する各国の考え方を変え、人類全体に大きな影響をもたらした」と記している。

チェルノブイリの事故当時、原発の炉心が爆発することなどは不可能と考えられていた。実際に事故が起こった後も、危険性があることは隠されていた。

杨大利はそれと新型コロナウイルスの感染拡大に多くの共通点を見る。「チェルノブイリと同じく、ウイルスとも長い戦いになるだろう。危機が終わっても、とくに被害者にとっては長い長い答え探しが続く。その点も同じだ」

中国の習近平国家主席についてもこう語った。「対応の誤りの責任はシステムにある。指導者として個人的に大きな権限を振るってきた習の責任はとくに重い」

<参考記事>マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける
<参考記事>「自分は何もできなかった」──新型肺炎を最初に警告した武漢の医師が自らも感染、死亡

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

デンマーク、女性も徴兵対象に 安全保障懸念高まり防

ワールド

米上院可決の税制・歳出法案は再生エネに逆風、消費者

ワールド

HSBC、来年までの金価格予想引き上げ リスク増と

ビジネス

焦点:税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中