最新記事

ヘイトクライム

マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

Asian Woman Allegedly Attacked in New York for Wearing Protective Mask

2020年2月6日(木)13時40分
イワン・パーマー

新型コロナウイルスの流行で、マスク姿のアジア人が差別の対象に?(写真は2月4日、香港) Tyrone Siu-REUTERS

<地下鉄の駅で女性が「病気持ち」「俺に触るな」と罵倒され殴る蹴るの暴行を受けた。アジア人のマスク姿が恐ろしいものに見え始めているのか>

ニューヨークの地下鉄の駅で、男がマスク姿の女性に暴行を加える事件が発生した。ニューヨーク市警(NYPD)は、新型コロナウイルスに関連したヘイトクライム(憎悪犯罪)の可能性があるとして、女性に被害を届け出るよう呼びかけている。

NYPDは、事件の様子を捉えた動画をソーシャルメディアで共有。マンハッタンのグランドストリート駅のなかを走る女性の前に突然男が立ちはだかり、手や脚や傘で殴る蹴るの暴行をするのが映っている。「俺に触るな」と、怒鳴る声も入っていた。

この動画を最初にフェイスブックに投稿したのは、ジン(匿名)という女性。それがオンラインメディアの「ネクストシャーク」が取り上げられて一気に拡散した。男はアジア系のこの女性がマスクをつけているのに気づくと、女性を「病気持ちのクソ女」と呼んだという。

新型コロナウイルスの感染予防のためにマスクをつけている人々を差別するものと思われる。同ウイルスは2019年12月に中国・湖北省の武漢で最初に感染が確認されて以降、世界各地に広まっており、これまでに2万8000人以上が感染し、500人以上が死亡している。

<参考記事>白人夫婦の中華料理店、「クリーン」を売りにしたら中国人差別と非難されて閉店に

マスク姿は「狙われる」

ジンは、現在は削除されたフェイスブックへの投稿の中で、「女性が黙っていると、男は女性に顔を近づけて彼女を脅そうとした」と書いている。「そして女性が『あっちに行って』と言うと、男は彼女の頭をものすごく強く殴って去っていった。私はこの時点から、男の顔を映そうと録画を始めた」

「女性が傘で殴られているのに、私が男を止めるまで誰も何もしなかった。男はその後すぐに走って駅を出ていった。今ニューヨークでマスクをつけていると狙われるのだと思う。みんなも気をつけて欲しいし、ほかの人のために立ち上がって欲しい」

<参考記事>新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、悪いのは中国人の「ゲテモノ食い」ではない

ニューヨーク在住のアジア系男性トニー・ホーも、暴行の様子を捉えた動画をツイッターに投稿した。

「多くのアジア人はコロナウイルスの感染が流行するずっと前からマスクをつけているのに」と、彼はツイートした。「危機が起こったとたん、マスクを脅威と感じるようになった」

ヒジャブをかぶったイスラム女性が各国で恐怖の対象になったように、今やマスク姿のアジア人が怖い、というわけだろうか。

さらに彼はこう続ける。「アジア人が事件に巻き込まれても、その情報は広まらない。みんなアジア人は従順で気が弱いと思っていて、アジア人に『何かが起こるなんてありえない』と思っている。だから実際にその『何か』が起こっても、うやむやにされて闇に葬り去られる。こういう動画だって、本物かどうかをまず疑問視される」

この動画を見たニューヨーク市警のヘイトクライム特別対策班は、暴行はヘイトクライムにあたる可能性があると指摘。「警察が本格的な捜査に着手できるよう、被害を届け出て欲しい」とツイッターで呼びかけた。

(翻訳:森美歩)

20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 6
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 9
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中