最新記事

感染症

中国の新型コロナウイルス危機は「チェルノブイリ級」と世界が囁き始めた

Political Scientist: History Will See Coronavirus as China's Chernobyl

2020年2月14日(金)16時15分
カシュミラ・ガンダー

WHOは1月30日になって、同ウイルスの感染拡大について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。中国については、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時とは対照的に、対応と情報の透明性を高く評価した。

だがウイルスの発生源とされる武漢市は、1月9日に新型ウイルスを発見していながら、20日まで情報を公開しなかった、と批判の声が上がっている。周先旺市長も、情報が「タイムリーに」発表されなかったことを認め、「上からの許可を待たなければならなかった」と、暗に中央政府を批判した。

昨年末にいちはやくウイルスの発生に警鐘を鳴らし、その後自らもCOVID-19に感染していた医師が2月7日に死亡すると、中国国内では怒りの声が上がった。李文亮は武漢市在住の医師で、メッセージアプリのWeChatで原因不明の新たな病気の発生を警告していたが、警察に「デマを流した」と見なされ、処分された。

英ガーディアン紙によれば、彼の死を受けて中国の一般市民の間からは悲しみや怒りの声とともに、言論の自由を求める声が上がった。中国当局はこれが騒動に発展するのを阻止するために、「李を追悼するために街頭で抗議を」と呼びかけたWeChatのメッセージを削除したとみられる。

中国は『チェルノブイリ』も削除

ここでもチェルノブイリが引き合いに出された。オンライン誌クォーツによれば、李を偲んでWeChatに投稿されたメッセージの中で、あるユーザーはHBOが制作・放送したドラマ『チェルノブイリ』の中のバレリー・レガソフ(同原発事故の調査を率いた科学者)の台詞を引用した。

「嘘の代償は何だろうか」と、その投稿には書かれていた。「私たちが知りたいのはただひとつ。『誰のせいか』ということだ」

ワシントン・ポスト紙も1月末、HBOの『チェルノブイリ』の中国語レビューサイトに多くの人がコメントを書き込んでいると報じた(その後、検閲が入りこのレビューページは削除された)。

記事はこう書いていた。「多くの人が、今の中国と事故当時のソ連の愚かさに共通点を見出し、武漢のウイルス感染拡大はチェルノブイリ事故のようなものだと示唆するコメントを書き込んでいる」

(翻訳:森美歩)

20200218issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月18日号(2月12日発売)は「新型肺炎:どこまで広がるのか」特集。「起きるべくして起きた」被害拡大を防ぐための「処方箋」は? 悲劇を繰り返す中国共産党、厳戒態勢下にある北京の現状、漢方・ワクチンという「対策」......総力レポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日銀保有ETF、9月末時点で評価益46兆円=植田総

ワールド

ホンジュラス大統領選巡る混乱続く、現職は「選挙クー

ワールド

トランプ氏、集会で経済実績アピール 物価高への不満

ワールド

小泉防衛相、中国から訓練の連絡あったと説明 「規模
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 9
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中