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セレブがこぞって応援するサッカーチームって?
今のイギリスで、ちょっと気になる偶然の一致がある。イギリスの首相であるデービッド・キャメロンと王位継承順位第2位のウィリアム王子が、同じサッカーチームを応援しているのだ。
さらに奇妙なのは、そのチームがアストン・ヴィラであること。サッカーファンは通常、地元のチームか、少なくとも自分が育った地域のチームを応援する。ところがキャメロンもウィリアム王子も、ヴィラの本拠地であるバーミンガム生まれでもなければバーミンガム育ちでもない。
僕は以前にもある有名人が応援しているチームを知って、なぜこのチームなんだと不思議でたまらなかったことがあるが、それもまたヴィラだった。イギリスで最も有名なクラシック奏者の一人でバイオリニストのナイジェル・ケネディだ。トークショーやラジオのインタビューで、彼はいつもビバルディを語るかのようにヴィラについて語る。
ケネディはバーミンガム出身ではないし、明らかなロンドンっ子なまりだから、彼がウエストハムのようなロンドンのクラブではなく、ヴィラを応援するのはすごく不自然に感じる。
この3人に共通するのは、「素朴」とか「ごく普通の男」と見られることで得をするということだ。サッカーはイギリスの国民的スポーツとして知られているが、より現実的な言い方をするなら、イギリスの「労働者階級の」娯楽だ。上の階級の人々はラグビーやクリケット、テニス、馬術などをたしなむもの。イギリスのスポーツには明らかな階級の隔たりがある。
3人それぞれに、ヴィラを応援するそれなりの理由はあるのだろう。それを疑うつもりはないし、サッカーファンを名乗るからには誰しも「筋金入りの」ファンでなければならない、とも思わない。気軽なファンが入り込む余地だってある。でもこの3人にとって、サッカーファンとみられるのは彼らの利益にかなう、という点が面白い。
イギリスにおいてクラシック音楽は、上流階級的で大衆向きではないというイメージだ。ケネディがパンクに身を包み、労働者階級のなまりでサッカーについて語りながら音楽界に現れると、そのスタイルはなんだか斬新で、おかげで一気に有名になれた。
彼のキャラクターが宣伝のための戦略だとしたら、大成功だった。ケネディが89年にレコーディングしたビバルディの「四季」は、「平均的な」イギリスの家庭にある唯一のクラッシックCDではないかと思う。
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