コラム

ウイグル人と自転車屋を殺す習近平?

2021年09月03日(金)16時25分
バーにいる習近平

ILLUSTRATION BY AYAKO OCHI FOR NEWSWEEK JAPAN

<今、独裁者ジョーク界の主役は習近平。中国政府によるウイグル人などの弾圧に対し、欧米で非難の声が広がっている>

【自転車屋】
北京のバーで習近平(シー・チンピン)が側近と酒を飲んでいた。習近平が言った。

「今度、1000人のウイグル人と、1人の自転車屋を殺そうと思う」

その話を耳にした1人の学生が、驚いて習近平に聞いた。

「1人の自転車屋って、それは一体どういうことなのでしょうか?」

習近平はニヤリと笑いながら、側近にこう言った。

「ほら見ろ。人民はウイグル人の命などなんとも思ってやしない」

◇ ◇ ◇

ジョークの本質は風刺である。なかでも権力者、とりわけ独裁者を笑い飛ばすことは、最も人間らしい営為の1つとでも言えるかもしれない。

20世紀、人類が最大の笑いの標的としたのは、ソ連のスターリンだった。共産主義が抱える矛盾や不条理は格好の笑いの餌食となった。

そして21世紀、独裁者ジョーク界の新たな主役の座に堂々と上り詰めたのが、中国の習近平である。

アメリカ国務省によると、新疆ウイグル自治区では実に100万人以上もの人々が強制収容所に送られたと推計されている。

アメリカの超党派議員らは、2022年の冬季五輪の開催地を北京から変更するようIOC(国際オリンピック委員会)に要請中。彼らは中国政府がウイグル人などを弾圧していることを強く問題視している。

このような動きは、ヨーロッパなど世界各地に広がりつつある。イギリスの保守党元党首のイアン・ダンカン・スミス議員は、北京での五輪開催を容認することは「ヒトラーに対する宥和に等しい」と主張。

ナチスドイツに対してヨーロッパ諸国が宥和政策で臨んだことがヒトラーの増長を招き、第2次世界大戦につながっていったことは、20世紀の重要な教訓である。

日本では在日ウイグル人らが中国の人権侵害を非難する国会決議の採択などを求めているが、日本政府の動きは国際社会と比べていかにも鈍い。

これでは日本国憲法前文の「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」の理念にも反するのではないか。

プロフィール
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾、AIブームでETF投資過熱 相場反転に警戒感

ワールド

豪、中国軍機の豪軍ヘリ妨害を非難 「容認できない」

ビジネス

米規制当局、金融機関の幹部報酬巡るルール作りに再着

ワールド

ヨルダン国王、イスラエルのラファ侵攻回避訴え 米大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story