最新記事
ロシア

ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行する動画公開...激しさ増すロシア国内への「越境攻撃」

Ukraine destroys Russian Ka-32 helicopter in Moscow: Video

2024年5月4日(土)13時09分
デービッド・ブレナン
ロシア国内の空港でウクライナが工作活動

ロシア国内の空港でウクライナが「放火」工作を実施(写真はドモジェドヴォ空港) Maxim Shemetov-Reuters

<ウクライナ国防省情報総局(GURMO)が、ロシアのKa32に「放火」をする動画を投稿し「破壊した」と発表>

ウクライナ国防省情報総局(GURMO)は4月末、ロシアの首都モスクワ郊外にあるオスタフィエボ空港でロシアの多目的ヘリコプターKa32が破壊されたと発表した。同情報総局がテレグラムの公式チャンネルに投稿した動画を見ると、何者かが夜の闇に紛れてKa32ヘリの機内に「放火」し、みるみるうちに炎が燃え広がっていく様子が捉えられている。

■【動画】ウクライナ情報機関、モスクワの空港で「放火」工作を展開...ヘリに火をつける「隠密行動」動画

動画にはヘリコプターのキャビン(客室)内に火が放たれた様子が映っているが、この火災でヘリがどの程度の損傷を受けたのかは明らかにされていない。情報総局は、このヘリは「黒焦げになった」としている。また同局は動画に、「破壊されたヘリコプターは、侵略国家であるロシアが軍の作戦を支援する目的で使用していたものだ」と説明を添えた。

情報総局はまた声明の中で、オスタフィエボ空港はロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」の傘下にある航空会社「ガスプロムアビア」が共同で運営しているとも説明した。ガスプロムもガスプロムアビアも、ロシアによるウクライナへの本格侵攻に関連してアメリカによる制裁の対象となっている。

ウクライナのメディア「MV」は情報総局関係者から得た情報を引用し、破壊されたヘリコプターはロシア国防省が所有していたものであり、物資輸送や戦闘員の撤退作戦などを行ってロシア軍を支援するのに使用されていたと報じた。

ロシア国内への越境攻撃は「避けられないプロセス」

ウクライナの情報機関はモスクワを含むロシア深部へのドローン攻撃や破壊工作に関与しており、今回の攻撃が事実と確認されれば彼らが関与した新たな攻撃ということになる。

ウクライナは特にこの数カ月、ロシアのエネルギー施設に対する攻撃を強化し、ロシア軍による効果的な作戦展開を妨害している。また一連の攻撃により、世界のエネルギー価格への影響を懸念する声も高まっている。

ウクライナの当局者らは、ロシア国内での攻撃について関与を認めることはあまりないが、ウクライナからの越境攻撃については繰り返し、自分たちにはその自由があると擁護してきた。アメリカをはじめとする国際社会は越境攻撃に反対を表明している。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2023年夏にモスクワに対するドローン攻撃があった後、「戦争は徐々にロシアの領土、ロシアの象徴的な中心地や軍事基地に戻りつつある。これは避けられない自然な、そしてまったく公正なプロセスだ」と述べていた。

このような攻撃は過去1年の間に増加傾向を見せている。たとえば4月16日には、ウクライナ国防省情報総局がロシア東部にある爆撃機の製造工場へのドローン攻撃に関与したことを認めた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン、湾岸3カ国通してトランプ氏に停戦仲介要請=

ワールド

ロ・トルコ首脳、イスラエルのイラン攻撃を非難 即時

ワールド

米ロ外交協議中止、米国決定とロシア報道官 関係改善

ワールド

イラン、敵対行為終結に向け米・イスラエルと協議模索
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中