コラム

有望な「高齢者向けテック市場」、その代表企業はアップルだ

2021年06月11日(金)13時31分

どう見ても若者向けだが実は高齢者向けの機能が満載のアップルウォッチ Brendan McDermid-REUTERS

<2030年にかけて世界で最も裕福で最も人口が大きい市場になるのがアジアの高齢者層。彼らに売れなければ成長はない。そのヒントはアップルに学べ>

エクサウィザーズ AI新聞(2021年6月9日付)から転載

これまでいろいろなビジネスを見てきて思うのだけど、ビジネスに最も重要なことは波に乗ることだと思う。Amazonにしろ、楽天、ソフトバンクにしろ、インターネットという波に乗ったので、今日の姿があるのは間違いない。

そして今から2030年にかけての世界的な大きな波といえば、やはり高齢化だ。高齢化の最先端である日本で、高齢者向け製品やサービスを作って海外、特にアジアで展開するのが一番の勝ち筋である。これは既に多くの人が言っていることだけど、ウォートンスクールのギレン教授と話していて、さらに強く確信するようになった。【関連記事:2030年ビジネス成功の秘訣は「高齢者を年寄り扱いしないこと」米ウォートンスクール教授

2030年にかけて、世界で最も裕福で、最も人口が大きくなるのが、アジアの高齢者層になる。やはりここを狙うしかない。

一つ大事なのは、高齢者に対する認識を変えることだ。高齢者を大別すると、病弱で貧困層の高齢者と、健康で富裕層の高齢者がいる。高齢者向け製品、サービスというと前者を想定する人が多いが、市場として急成長が見込まれるのは後者だ。

ほとんどすべての企業が、この健康でお金を持っている高齢者向けに製品、サービスを作っていくことになるのだと思う。というか、そういう企業しか大きく成長しないのではないかと思う。この成長市場を狙っている企業のことが、Age Tech企業と呼ばれるようになってきた。最近Forbes誌がAgeTechに関する記事を書いていたので、高齢者向けテクノロジー企業はAgeTech企業という呼ばれ方に収れんしていくように思う。

「高齢者向け」は禁句

ただ自らAgeTech企業と名乗るのはNG。一般向け製品と見せかけて、機能は高齢者を意識したものにする必要がある。そういう意味で、Appleは既にAgeTech企業の代表格である。最新のApple Watch は心拍数や心拍変動のみならず、血中酸素濃度まで計測できるようになってきた。血中酸素濃度なんて若者にはほとんど意味のない数値だ。Apple Watchには転倒検知機能もついているが、これも若者には不要。だが高齢者にとっては非常に優れた機能。お金に余裕のある高齢者は、こうした健康関連の機能が追加されるたびにApple Watchを買い換えることだろう。

つまり高齢者向けと謳わないが機能は高齢者に非常に役に立つ、という製品、サービスがこれからの売れ筋になっていくのだと思う。

健康な富裕層をターゲットにするという話をすると、「病弱な貧困層を無視するのか」という批判が必ず起こる。だが、これまでのデジタル技術の歴史を見る限り、富裕層向けに開発された技術は、必ず数年後には価格が下がり貧困層の生活を豊かにしている。

まずは富裕層向けに技術を開発する。これが王道。その逆はない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏「毒殺」欧州声明、ルビオ長官「米に疑う

ワールド

米イラン合意、核施設解体含むべきとイスラエル首相 

ワールド

ガザ平和評議会、加盟国が50億ドル超拠出表明へ=ト

ワールド

イラン、米との協議で共通の利益模索 エネルギー・鉱
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 2
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story