コラム

「IoTに八百万の神を」内向的な電通女性クリエイターがデバイスに込める日本の心

2015年07月31日(金)12時54分

 なかのかな。上から読んでも「なかのかな」、下から読んでも「なかのかな」。

 世界的ヒットとなった脳波連動コミュニケーションツール「necomimi(ネコミミ)」を開発した電通の女性クリエイターの名前だ。なかのさんは、どのようにして「necomimi」のような斬新な製品のアイデアを思いつくのか。今、彼女は何を考え、どの方向を向いているのか。直接会って話を聞いてみた。


脳波連動コミュニケーションツール「necomimi(ネコミミ)」

 僕がなかのさんの存在を最初に知ったのは、ずいぶん前のことだ。2010年ごろだったと思う。スマートフォンのカメラを通じて周辺を見渡すと、蝶々が見える。スマートフォンを虫取り網に見立てて、その蝶々を取ろうとスマホを振りかざすと、蝶々とともに情報や広告を取り込むことができる。

 今で言うところのAR(拡張現実)アプリだ。しかし、その当時ARアプリなどほとんどなかったし、あっても空間にメモが浮いているだけの無骨なものが多かった。欧米の先行アプリを真似するのでもなく、遊びココロあふれたアプリのコンセプトに感心したことを覚えている。そのアプリ「iButterfly(アイバタフライ)」を開発したのが、なかのさんのチームだった。

 当時わたしが編集者を勤めていたオンラインメディア「TechWave」にiButterflyのことを書いたところ、開発チームの1人、加賀谷友典さんから連絡をいただき、加賀谷さんとの友人関係が始まった。

脳波でコントロールではなくコミュニケーション

 それから加賀谷さん・なかのさんを含めたチームは脳波コミュニケーションツール「necomimi」のヒットを飛ばした。「necomimi」は海外メディアなどで大きく取り上げられ、開発チームは世界各地の大きな見本市に呼ばれるまでになった。オランダの見本市に展示しにいったときには、テレビ局が取材に来たあと、見本市会場に厳戒態勢がしかれた。何事かと思うと、オランダのロイヤルファミリーのお忍びでの来場だった。幼い王子や王女が、大喜びでnecomimiを装着して遊んだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド首都で自動車爆発、8人死亡 世界遺産「赤い城

ワールド

トランプ氏、ジュリアーニ元NY市長らに恩赦 20年

ビジネス

ミランFRB理事、大幅利下げを改めて主張 失業率上

ワールド

台湾半導体「世界経済に不可欠」、防衛強化にも寄与=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story