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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

戦後80年、ドイツとヨーロッパの思いー記憶の継承と過去との向き合い、そして戦争への不安

若い世代への教育と記憶の共有

特に若い世代は、ナチズムやホロコーストの歴史を学び、現代の極右思想や排外主義への警戒を強めている。

ベルリンでは、2025年5月8日を「解放の日(Tag der Befreiung)」として一度限りの公的祝日に制定した。この日は、ナチス・ドイツの降伏とヨーロッパにおける戦争終結を記念する日として、若者が歴史を学び、現代社会の課題と結び付けて考える機会が設けられた。

また、年間を通じて教育機関や市民団体は、ナチズムやホロコーストの記憶を風化させないためのプログラムを展開し、平和と民主主義の重要性を伝えている。

責任の捉え方には社会的な温度差も

一方で、ドイツ国内には「過去を清算すべきだ」と考える人も約25%存在し、歴史的責任の捉え方には温度差が見られる。また、ホロコーストとその被害者に関する知識には地域差があるようだ。

近年、極右政党AfD(ドイツのための選択肢)の台頭が社会的な課題として浮上していることから、特に東部と西部ドイツの社会的態度に違いが顕著になっている。

とはいえ、大半のドイツの一般市民は、戦争の記憶を大切にしつつ、現代の社会的・政治的課題も真摯に向き合う姿勢を示している。

歴史認識や記憶の継承に関する意見の多様性は、ドイツ社会の成熟度と民主主義の健全性を反映していると言える。しかし、今後の動向には引き続き注視が必要だ。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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